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第38回東京国際映画祭作品レビュー:30:『君の顔では泣けない』

第38回東京国際映画祭作品レビュー:30:『君の顔では泣けない』

作品情報

監督/脚本:坂下雄一郎

原作:君嶋彼方

音楽:パク・イニョン

チーフ・プロデューサー:小西啓介

撮影:野口健司

照明:後閑健太

録音:島津未来介

美術装飾:有村謙志

出演 : 芳根京子

髙橋海人

西川愛莉

武市尚士

中沢元紀

前原 滉

林 裕太

  • 123分
  • カラー
  • 日本語
  • 2025年
  • 日本
  • ハピネットファントム・スタジオ

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会

【ストーリー】

高校1年生の夏、心と体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみ。元に戻ることを信じ奔走するが、15年経っても元には戻らなかった。初恋、進学、就職、結婚、出産、親との別れ——人生の転機を経験していくふたり。しかし30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる…。

坂下雄一郎は『決戦は日曜日』(2022)、『金髪』(2025)といったシニカルな視点が得意な映画作家であるが、それはファンタジーにおいても同様だ。今作は高校時代に入れ替わったまま、元に戻れなくなった男女が30歳になったタイミングで、元に戻る手段を見つけたものの、さてどうする?!!といった物語。

入れ替わってすぐであれば、元に戻りたいというのが普通だが、そこから年月が経ち、それぞれの体で、それぞれの人生を15年生きてきたとなれると、そう簡単な話ではなくなってくる。

入れ替わったふたりが恋愛関係になる設定でもよかったかもしれないが、その場合は、鏡の自分と恋愛しているようで、感覚的に無理なのかもしれない。そんなリアルな視点が入っているように感じた。設定はファンタジーでも、思考はリアルな部分が随所にあるからこそ、現実的な物語として伝わってくるのは、かなり不思議な感覚だ。

元に戻った場合を考えて、互いの影響を最小限に留めようとしていられるのは、せいぜい1年といったところ。仕事や両親、結婚、恋愛、出産など、人生の様々な分岐点を経験してきたふたりにとって、元の体に戻るということは、今までの人生をリセットしてしまう。つまり自分の恋人や子どもが一瞬で他人になってしまう残酷な行為でもあるのだから。

アイデアや着眼的もおもしろく、年月が経てば経つにつれて、話が複雑化していく構造も坂下監督の色が凄く出ていたのと、『金髪』のときもそうだったが、30歳を人生の節目として描くスタイルも強く感じた。

総合評価:87点

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