作品情報
監督/脚本:坂下雄⼀郎
音楽:世武裕子
製作総指揮:藤本 款
プロデューサー:深瀬和美
プロデューサー:若林雄介
撮影監督:⽉永雄太
照明:藤井 勇
出演 : 岩⽥剛典
⽩⿃⽟季
⾨脇 ⻨
⼭⽥真歩
⽥村健太郎
内⽥ 慈
- 103分
- カラー
- 日本語
- 2025年
- 日本
- クロックワークス
【ストーリー】
その⽇、中学校教師・市川の⼈⽣を⼤きく変える出来事が起きた。⼀つは担任クラスの⽣徒数⼗⼈が髪を⾦⾊に染めて登校してきたこと。そしてもう⼀つは、彼⼥から結婚の話を切り出されたこと。マスコミやネット、さらには⽂科省まで巻き込み⼤騒動になる“⾦髪デモ”と、⽇々の愚痴を聞いた彼⼥からの⾟辣な説教で板挟みになる市川は、窮地を脱するために“⾦髪デモ”を計画した張本⼈・板緑と⼿を組み、とある作戦に打って出る⋯。仕事の問題と⼈⽣の決断が⼀挙に押し寄せた市川は、いつまでも若者で何事も順⾵満帆だと思っている“イタいおとな”から“マトモな⼤⼈”へと成⻑し、全ての試練を乗り越えられるのか︕︖

『決戦は日曜日』(2022)を観たことがあれば、坂下雄一郎という映画監督がいかに挑戦的な人物であることはわかるはずだ。おそらく日本の社会風刺映画監督としては右に出る者はいないだろう。今作の視点も鋭かった。
ある日、あるクラスの生徒がほぼ全員、金髪で登校してくるという出来事が起き、それがタイトルの『金髪』を表しているのだが、劇中でも語られる通り、主題となるのは、その行為自体ではない。
校則の矛盾点と社会システムの矛盾点を指摘し、さらには日本の教育システム、同調圧力によって、コロコロと変わるSNS事情などにアクセスしていく。実際に金髪にしてきたクラスメイトのほとんどは、どうして金髪にして、それが何を主張するための行為だったのかを理解しておらず、ただ単に、その行為そのものをおもしろがっているだけにしか過ぎなかった。
そのため、学校生活に支障が出る現実を目の当たりにすると、すぐに辞めてしまう。実は抗議活動に参加する半数が、こういったマインドの人々であり、表面上の正義感やそれらしい思想の周りに流されているだけで覚めるのも早い。その点では、アリ・アスターの『エディントンにようこそ』と描いていることに共通する部分が多いだろう。
そんな社会問題を主人公の30歳問題とリンクさせながら描いていくのも独特であり、政治に不関心な人が増えているといわれているが、そもそも一般個人が社会や政治問題とは切り離された位置で生きていて、そんな問題よりも上回っているのは、ごくごく個人的な悩みである。
『決戦は日曜日』で政治家のスキャンダルが北朝鮮のミサイル発射騒動によって風化されるという、日本の映画ではなかなか見られないブラックジョークも盛り込んでくるなど、切れ味の鋭い政治風刺を描いただけのことはあり、今作でも教育制度風刺を中心に、様々な社会に蔓延る矛盾点に切り込んでいくのは痛快であった。
アリ・アスターとは言ったが、全体的なものでいうと、日本のアダム・マッケイと呼んでもよいのではないだろうか。とにかく日本では、なかなか存在していない、唯一無二の映画クリエイターだ。
総合評価:89点



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