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第38回東京国際映画祭作品レビュー:12:『マザー』

第38回東京国際映画祭作品レビュー:12:『マザー』

作品情報

監督/脚本:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ

プロデューサー:セバスチャン・デロワ

脚本:ゴツェ・スミレフスキ、エルマ・タタラギッチ

出演:ノオミ・ラパス

シルヴィア・フークス

ニコラ・リスタノフスキ

104分/カラー/英語/2025年/ベルギー・北マケドニア

©Entre Chien et Loup, Sisters and Brother Mitevski

【ストーリー】

1948年、インドのカルカッタ(コルカタ)を舞台に、ロレト修道女会を離れ、自らの修道会を設立しようとしていた時代のマザー・テレサの決定的な一週間を描く。自らの後継者として指名しようとしていた修道女が妊娠し、中絶を望んでいることを知って、現実と信仰のはざまで葛藤し、精神的に追い込まれてゆく……。

テオナ・ストゥルガル・ミテフスカの作品というと、日本では『ペトルーニャに祝福を』(2019)が公開されたのみではあるが、同作のオープニングでパンクロックが使用されていたのが印象的だったように、今作においてもオープニングは勿論、随所にパンクロックが使用されていた。つまり強い女性を表現するにあたって、テオナが想像するテーマソングはパンクロックなのだろう。

ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』(2006)も80年代UKパンクロックを使用していたが、時代にそぐわない反逆児を描くにあたって、音響的な説得力をもたらすのは、パンクロックであると改めて実感した。

マザー・テレサは、テオナの故郷である北マケドニア出身であり、実家からも1km程度先のスコピエが出身地であることから、いつか映画化しようという意識があったらしく、着想から15年以上かけて完成させたのだ。

テレサが有名になるのは、今作で描かれている部分よりも、もう少し後の話ではあるが、分岐点となったテレサの若き日、”ある7日間”を描いた物語となっている。テレサには、シスターとしてではなく、独自の慈善活動をしたいという強い意志があったからこそ、出世欲が強く、ときには周りを蹴落とすぐらいの勢いがあった。

今作で描かれているものはフィクションではなく、テレサ本人の日記や複数のシスターのインタビューから人物像を構成している。信仰とテレサの正義の間で揺れる心情の表現としてホラー的な演出が多く取り入れられていたのも印象的だが、それも日記からテオナが感じとったものかもしれない。

7日間に限定し、その制限された環境のなかで人物像を描こうとする際に出るアドレナリンのようなものをメタ的にも反映させており、そこは『モレク神』(1999)や『牡牛座 レーニンの肖像』(2001)などで知られるアレクサンドル・ソクーロフの手法を意識したとか。

総合評価:83点

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