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この映画語らせて!ズバッと評論!!『天気の子』様々な「代償」の先にある「愛」にも「代償」がつきまとう...

この映画語らせて!ズバッと評論!!『天気の子』様々な「代償」の先にある「愛」にも「代償」がつきまとう...

作品情報

『君の名は。』が歴史的な大ヒットを記録した新海誠監督が、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄されながらも自らの生き方を選択しようとする少年少女の姿を描いた長編アニメーション。離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。『兄に愛されすぎて困ってます』に出演した醍醐虎汰朗と『地獄少女』『Last Letter』など話題作への出演がひかえる森七菜という新鋭の2人が、帆高と陽菜の声をそれぞれ演じる。そのほかの出演に小栗旬、本田翼、平泉成、梶裕貴、倍賞千恵子ら。『君の名は。』に続いて川村元気が企画・プロデュース、田中将賀がキャラクターデザイン、ロックバンド「RADWIMPS」が音楽を担当。RADWIMPSが手がける主題歌には女性ボーカルとして女優の三浦透子が参加。

『天気の子』レビュー

個人的に新海誠作品は、好きでも嫌いでもない。前作の『君の名は。』が評価された理由は理解できなかったが、それは嫌いであったからではない。

しかし今作は、近年に観た日本のアニメ映画の中では、トップレベルの作品だったといえるだろう。

雨の日が続く異常気象の中の「東京」を舞台としていて、『君の名は。』がメガヒットしたことでタイアップも多くなり、実在の企業名や商品名が清々しいほどに登場してくることで、普段見ている「東京」が逆に演出されているという逆手にとった演出は流石である。

銃を手にした代償、家出をしてきた代償、そして世界の秩序を変えてしまった代償… この作品で描かれるものは「代償」である。

銃を拾う展開は、物語上で異質のように感じてしまうかもしれないが、この展開には大きな意味がある。

主人公帆高は、基本的に気弱なキャラクターである。自分を出したいが、その勇気がないのだ、そんなキャラクターが立ち向かう勇気を与えるのが、皮肉なことに「銃」なのである。銃を手にすることで気持ち的に強気になったり、一種の余裕みたいなのを感じられるという精神状態は『ディア・ウェンディ』などの10代が銃を手にした末路を描いた映画などでも扱われている。

そんな気弱なキャラクターが勇気をもって立ち向かうという映画的展開をさせるには、現実的には「きっかけ」が必要ということだ。それが「銃」なのだ。

超常現象を扱っていながら、人物描写がリアルな現代人風という、ファンタジーとリアルが共存した独特の世界観は見事な演出によるのである。

祈ることで天気にすることができる能力をもった少女陽菜が、能力を使うことで、何か体に異変が出始めていて、このまま使い続けると、取り返しがつかなくなっていくという展開も「能力を使いすぎた代償」という「代償」である。

陽菜が「代償」を受け入れ、自己犠牲によって、世界の秩序を元に戻したが陽菜を救うために再び秩序を壊してしまう。

その世界を壊してしまった「愛の代償」を背負い続けないといけない…何事もなかったかのように生きてはいけないという現実を軽く描いているようにも思えるかもしれないが、決してそうではない。

主人公たちがまだ10代というのが世界の見え方の違いを象徴しているのだ。10代の視点から見せているから感じてしまう、少しご都合主義な展開そのものさえもがメタ的視点を利用した構造のようにも感じられる。

宮崎駿の『崖の上のポニョ』という作品があったが、この作品は手に入れた愛の代償があまりにもフワっと描かれていたのに対して、今作も十分というレベルではないが、その手前まで描いている。

個人的にこれは「究極の愛」を描いた作品である。

この時点では、10代の感覚、考え方、価値観が自然災害を引き起こしてしまったという現実を本当の意味で受け止める時というのは、まだ先かもしれないが、2人がそれに気づいたとき、本当の「代償」がのしかかってくるのであろう

それはまた別の話である...といったところだろうか。

点数 80点

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