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THE映画紹介『摩天楼を夢見て』ブラック会社が植え付けた概念に逆らうことができない構造を会話のみで描きだす!!

THE映画紹介『摩天楼を夢見て』ブラック会社が植え付けた概念に逆らうことができない構造を会話のみで描きだす!!

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『摩天楼を夢見て』

作品情報

ニューヨークの不動産業界を舞台に、不動産セールスマンたちの姿を描く人間ドラマ。監督は『アフター・ダーク』のジェームズ・フォーリー。製作は元コロンビア映画の製作担当副社長で、ホテル業界に転身した後、映画界に復帰したジェリー・トコフスキーと建築・金融・不動産業界で活躍してきたスタンリー・R・ズプニック。エグゼクティヴ・プロデューサーはジョゼフ・カラチオーラ・ジュニア。83年ロンドンで初演され、ピューリッツァー賞を受賞したデイヴィッド・マメットの同名戯曲を『殺人課』などで監督としても活躍する彼自身が脚本化。撮影はファン・ルイス・アンシア、音楽は『愛の選択』のジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。主演は『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』『スカーフェイス』のアル・パチーノ、『JFK』のジャック・レモン、『キスヘのプレリュード』『エリザベスタウン』のアレック・ボールドウィン。他に『アビス』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のエド・ハリス、『ロケッティア』『リトル・ミス・サンシャイン』のアラン・アーキン、『ヘンリー&ジューン 私が愛した男と女』『』のケヴィン・スペイシー、『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』のジョナサン・プライスが共演。

『摩天楼を夢見て』基本情報

1992年製作/アメリカ
原題:Glengarry Glen Ross

監督: ジェームズ・フォーリー

出演 : アル・パチーノ、ジャック・レモン、エド・ハリス、ケヴィン・スペイシー、アレック・ボールドウィン、アラン・アーキンなど

短評

アル・パチーノ、ジャック・レモン、エド・ハリスといった渋い俳優がここまで揃う作品も珍しい。渋さ100%、女子率0%の男社会を描いた作品。

会社という縦社会、奴隷構造から抜け出せず、従うことでしか働くことができないし、会社を辞めると生活を存続させることができないという、現代社会、得に営業職においては今でも色濃く残る社会的呪縛、概念を皮肉的に描き出した作品であって、サラリーマンやセールスマンであれば、只ならぬ緊張感に共感しないではいられない構造が恐ろしい作品である。

たまたま近くに来ていて~、今印鑑を押してもらわないと売れてしまう~っていう何百、何千万の商品に即決を求める企業なんかブラックでしかないのが、昔も今もそんな会社はたくさんある。

ノルマを達成できない人間は、ゴミのように扱われ、罵声を浴びせられる。

やっと今になって、ブラック企業だから辞めてしまえばいいという考えができるようにもなりつつあるが、80~90年代当時は、ブラック企業という言葉もなかった時代なだけに、それが当たり前だったのが、今考えると恐ろしい。

この映画は、当時アカデミー賞を受賞したことでも話題となり、営業会社の研修にも使われたと言われているが…反面教師としてではなく、模範として見せていたというのだ。

正当な商品や株式を売買しているような映画なら、まだ理解はできるのだが、売っているものがゴミのような詐欺商品という点が冒頭に登場するアレック・ボールドウィンからの威圧感によって、才能がないし、無能であるから商品が売ることができないという会社が作り出した概念を植え付けられることで霞んでしまう構造も正にブラックだ。

ほとんどが会話シーンによって物語が展開されるため、バックボーンを描くことをしておらず、会話術、主導権を握ったときに変わるトーンのみでキャラクターを分けている。

淡々と商品の説明をする人、日常会話から友達感覚で話を進める人、情に訴える人、とにかく直球で数をこなす人、成績は良くないけど残り続けている人など、セールスマンといっても様々なタイプが存在する。

会話シーンだけで観ている側に映画では描いていない、バックボーンを想像させるために、とにかく会話だけで演技ができるハイレベルな演技力が必要な映画であったことを考えると、やたら豪華な出演者にも納得がいくのではないだろうか。

丁度いい俳優であるアレック・ボールドウィンが今作も丁度いい!冒頭で本社からやって来たエリート役として登場し、会社にいるメンバーに罵声を浴びせるだけ浴びせて、成績2位以下はクビだという爆弾を落としていった後のには、一切登場しなくなるのだが…丁度いい!

出演シーンは10分もないというのに、圧倒的余韻を残して去っていくというのは、丁度いい俳優の象徴ではないだろうか。

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