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この映画語らせて!ズバッと評論!!『いなくなれ、群青』文章的なセリフの数々が独特の世界観を作り出す和製ファンタジー

この映画語らせて!ズバッと評論!!『いなくなれ、群青』文章的なセリフの数々が独特の世界観を作り出す和製ファンタジー

作品情報

大学文芸員が選ぶ第8回大学読書人大賞や、「読書メーター」 読みたい本ランキング第1位などを獲得した河野裕の同名ミステリー小説を『虹色デイズ』『オオカミ少女と黒王子』の横浜流星、『シライサン』『暗黒女子』の飯豊まりえ主演で映画化。七草は人口2000人程度の階段島にやって来た。階段島は捨てられた人たちの島で、島の人たちは誰もが自分がなぜこの島に来たかを知らない。特に疑問を抱くことがなかった七草の島での高校生活は平穏な時間だったが、幼なじみの真辺由宇との再会により状況は一変する。「納得できない」と憤慨し、島から出るために島にまつわる謎を解き明かそうとする真辺。七草と周囲の人々は真辺に巻き込まれていく。七草役を横浜、真辺役を飯豊がそれぞれ演じる。監督はアメリカの高校在学中にバッカイフィルムフェスティバルのオハイオ州優秀賞を受賞した柳明菜。

『いなくなれ、群青』レビュー

今作は、セリフのひとつひとつが文章的であるが、それは意図的にそうしているに違いない。今作は観る小説、観る詩集といった新ジャンル映画である。

青春映画のようなパッケージングをされていながら、実はファンタジーというギャプにも想像力を掻き立てられる。

謎の島に、突然連れてこられる人々の共通点は「何かを失くした」ということ。

主人公たちの目線となって、その「謎」を探求していくというスタイルではあるが、この映画の中で、その核心に触れてまっている。

よく観ていると中盤で「謎」はわかってしまうが、逆に言えば結論は、ぼやかしてもらいたかった。

映画を観ながら、独自の「謎」に対する推測を書いていたのだが、正にその通りという内容で拍子抜けしてしまった。

主人公が「謎」に気づく前に、サブキャラクターが、失くしたものは「例えば愛」と言うシーンがあるが、これはある意味、確信に触れている。

失くしたものに気づいたとしても、それが再度必要であると願ったり、信じたりしなければ、元の世界には戻れないのだ。

「謎」を解ってしまった後では、推測は事実となってしまう。島につれてこられる人の中で学生が多いのは、何故かという点でも成長する過程で捨ててしまうものが多い年代だということだからだ。

謎は謎のままにして、観ている側に解釈させてもよかったのではないだろうか。

海外ドラマで『LOST』という作品がある。このドラマは、飛行機の乗客が事故によって不時着した島での物語を描いていて、徐々に島の謎が明かされながらも、増えていくというミステリーだ。

裏事情を言うと、もともと結末を考えてなかったし、シリーズが延長されるにあたって、物語が後出しになるという海外ドラマ特有のプロットではあるが、結局『LOST』の結末は、よくわからないのである。

いろいろな仮説は立てられるのだが、結論は製作サイドから発表されていないし、そもそも結論があるのかも不明である。

この映画は、どうしてもネタバレなしでレビューすると、少し外観から観た評価になってしまうし、作品の本質を掘り下げていくとネタバレになってしまうという非常に難しいジャンルの映画だと言えるだろう。

予算がかけられないから、そうなってしまうのかもしれないが、日常の延長線上から誕生するファンタジー世界という独特の世界観は、日本独特のテイストだろう。

点数 80点

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