作品情報
【ストーリー】
「日向君、ストロベリームーンって知ってる?」 余命半年と宣告された萌は、高校一年生の春、一生分の恋をした。 桜井萌は、小さい頃から病弱で学校に通えず、友達もいないまま、毎日ひとり家の中で過ごす日々。そんな彼女の密かな夢は、自分の誕生日に、好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれるという6月の満月 「ストロベリームーン」を見ることだった。しかし15歳の冬、萌はついに自身の余命が残りわずかであることを宣告される。家族とともに悲しみに包まれた病院からの帰り道、萌は“運命の相手”を見つけ、高校に通うことを決意。そして入学式の日、初対面にも関わらず同じクラスの同級生・佐藤日向に突然の告白を決行する!萌の猛アプローチにより、人生初の<お付き合い>がスタート。初めて「恋人」という存在ができた二人は、少しずつお互いの距離を縮めていき、いよいよ萌の誕生日6月4日に「ストロベリームーン」を見に行く二人。しかし、その日を境に萌は学校から姿を消し、日向は萌と連絡が取れなくなる…。萌が消えた理由、そして13年後に届く秘密とは…?
【クレジット】
原作:芥川なお「ストロベリームーン」(すばる舎)
脚本:岡田惠和
監督:酒井麻衣
音楽:富貴晴美
主題歌:ORANGE RANGE「トワノヒカリ」(Sony Music Labels Inc.)
出演:當真あみ 齋藤 潤 / 杉野遥亮 中条あやみ 池端杏慈 黒崎煌代 吉澤要人 伊藤健太郎 泉澤祐希 池津祥子 橋本じゅん 田中麗奈 ユースケ・サンタマリア
配給:松竹
©2025「ストロベリームーン」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/stmoon-…
2025年10月17日(金)公開

一年生の入学式から病気が発覚し、それ以来、家に缶詰状態だった萌は、学校に行きたくても行けなかった。それでも両親のサポートによって、それなりに楽しい日々を過ごしていたが、学校への憧れは増すばかり。
いわゆる闘病ものと違っているのは、辛い闘病シーンはあまり見せないようにしている点だ。いわゆる「辛い、悲しい」に頼った感動ポルノではなく、受け入れて命を全うする萌の姿が描かれている。
遺された者たちが、過去を思い出したときに、病気の記憶だけしか残っていないというのは悲しすぎるとはわかっていながらも、弱音や死への恐怖は隠し切れないというのに、それを自分の中に変え込んで、自分を騙しながら、笑顔として消費しようとする萌の視点。そして、萌の意思を見守り、尊重して、悲しいことがあっても我慢し笑顔に変える両親の目線は胸を締め付けられる。
確かに悲しんでいても、何かが変わるわけではないし、かえって悪化する可能性の方が高いのだが、そうとはわかっていても実際に考えをアクティブに切り替えるは難しいのだが、萌はそれを懸命に実行する。
しかし、さすがの萌も余命半年を宣告されたその日は悲しみと動揺があふれだす寸前であった。そんなとき、偶然、道で泣いていた子どもを助けた日向に恋をしたことで、高校に通うことを決意し、さらに偶然にも同じクラスになれたことから、登校初日にスピード告白して日向を驚かせるが、日向も次第に萌の前向きな性格や考え方に惹かれていく。
病気のことは隠して、親友の助けを借りて恋を成就させていき、日向との心の距離も縮まっていく。しかし、心の距離が近づくと、相手を想うがあまり、自分がいなくなった後のことを考えるようになって、強い関わりを避けたくなり、離れようとする。つまり”想い”と”思い”が反発してしまうのだ。
萌が亡くなった未来のことも交互に描かれる点においては、若干「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」に似ている部分はあるものの、何があっても時間は過ぎていく。そんな人生のなかで、辛い思い出にするよりも、良い思い出にすることの意義を教えてくれているような作品だ。
また、萌役の當真あみ、日向役の齋藤潤は人気急上昇中のふたりではあるし、親友うらら役の池端杏慈もそうだが、今作には演技の上手い若手俳優が目白押しという部分でも注目すべき作品だといえる。
総合評価:85点



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