作品情報
1978年のアフガニスタン。共和制から社会主義に移行する時期を舞台に、親友でありながら裕福な共産主義者と貧しいムスリムという対照的なふたりの女子大学生が、その後のソ連による侵攻と反ソ武装勢力の決起による紛争の時代に移行するなかで翻弄されていく。こ
『 シマの唄 』レビュー
女性の権利を主張する運動家でもあり、国際女性映画祭を立ち上げるなど、その活動は映画界だけに留まらず、現実を変えようという意欲の強いロヤ・サダトの最新作。
長編デビュー作『Se noghta』(2003)から、女性の行動が極端に制限されたアフガニスタンを舞台とした、社会派な作品を撮り続けてきた。
第90回アカデミー賞・長編国際映画賞において、アフガニスタン代表作として選出された『A Letter to the President』(2017)のような劇映画の場合もあれば、『The Sharp Edge of Peace』(2024)のようにドキュメンタリーの場合もあったりと、様々なアプローチで社会にメッセージを送り続けている。
今作では、1978年のアフガニスタンの共和制から社会主義に移行するデリケートで常に緊張感が漂う時期を、育ちの違うふたりの女子大学生の視点を通してスリリングに描かれていく。
主人公スラヤのキャラクター構造からは、監督自身が投影されている部分があるようにも感じた。さらに演じているモジュデー・ジャマルザダーはシンガーである一方で、 アフガニスタンで女性の権利などの社会問題に取り組む活動家でもあることから、主人公と共通点が非常に多い。
かつては自由の国といわれていたアフガニスタン。夢も希望もあったはずが、いつどこでこの国は間違ってしまったのか……。そんな国民の嘆きもむなしく、劇的に変化していく社会。
史実をベースとしているため、エンターテイメント性を感じるような大逆転展開はなく、親友と引き裂かれた女性を淡々と静かな脅威として描いている。
点数 85
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