作品情報
脳性麻痺を患う青年リウ・チュンフーは、大学受験を控えるなか、祖母が力を注いでいる舞台を手伝っている。祖母はチュンフーを積極的に社会に関わらせようとするが、チュンフーの母は不安を隠せない…。障がいを持ちながらも力強く生きる若者のひと夏の成長を描いた作品。
『 小さな私 』レビュー
脳性麻痺の障害を抱える20歳のチュンフー。母親からは必要とされず、自殺という選択肢が頭をよぎるほど、このまま生きていくことに希望を見出せない。そんな障がい者の過酷な現実を冒頭から叩きつけられるカット。
体が自由に動かない。しかし思考や学習能力は同年代と何も変わらない。それどころか体さえ自由であれば、可能性が無限に広がる才能の持主だからこそ、より辛い部分も多い。
そんなチュンフーの祖母は、極端なほどに前向きで明るい性格。ふさぎ込んでしまいがちなチュンフーを無理にでもプッシュする、おせっかい気質ではあるが、チュンフーにとって、それがときに原動力であり、祖母の存在が唯一の救いでもあるのだ。
あることがきっかけで、未経験にも関わらず楽団の太鼓担当になってしまったチュンフーだが、練習中に出会った同世代ぐらいで積極的な女性に恋をする。それを原動力に、大学進学やバイトなど、今まで無理だと諦めていたことに挑戦していくチュンフーだが、やはり障がい者に対しての世間の壁は大きい。
期待や希望にことごとく裏切られ続けるチュンフーの姿は、心に刺さるほど辛い。
救いが全く無いわけではないが、比較的どん底に落とされるような描写が続く。いくら昔と比べれば障がい者に優しい世界になったとは言っても、現実問題は、まだまだ問題が山積み。だからこそ、サクセスストーリーとして美談として描くのではなく、極端なほどに残酷に、そして容赦なく描いているのだ。
そしてチュンフーに無償の愛で支える祖母のように、必ず味方はいる。それは障がい者でも健常者でも。
点数 80
コメントを書く