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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ミセス・チャタジーVSノルウェー』過剰脚色な部分もあるがラーニーの演技力は評価すべき作品!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ミセス・チャタジーVSノルウェー』過剰脚色な部分もあるがラーニーの演技力は評価すべき作品!!

作品情報

ノルウェーに居住したコルカタ出身のデビカ・チャタジーは二児の母。仕事人間の夫との関係には距離が少しありながらも家族みんなで暮らしていた。しかし、ある日突然、子どもを育てる環境に適してはいないという理由で子どもたちが保護されてしまう。何としてでも子どもを取り戻そうとするデビカの想いは届かず、一向に解決が見えてこない。デビカは思い切って里親の元から子どもを連れだし、ノルウェーから脱出しようとするが、寸前のところで逮捕されてしまう……。

『ミセス・チャタジーVSノルウェー』レビュー

かつて『何かが起きてる』や『Dil To Pagal Hai』などでは輝かしいヒロインとして活躍していた ラーニー・ムケルジーも近年は『女戦士』や『Hichki』など、障害に立ち向かう強い女性というイメージが定着しつつある。

それは従姉のカジョールも同じだ。カジョールも少し前に『サラーム・ヴェンキー』で難病を抱える子どものために闘う母親を演じていたし、日本でもリメイクされた『グッド・ワイフ』のヒンディー・リメイク版では主演を務めている。

今作は、ノルウェーに住むインド系移民サガリカ・チャクラボルティを襲った悲劇を描いたノンフィクション「THE JOURNEY OF A MOTHER」を元に映画化した作品ではあるし、原作を読んだわけではないが、映画的な脚色が多くされているように感じられる。

ノルウェー側は、子どもを保護した理由等が事実とは違っていると主張しており、本当はどうなのかわからないものの、ノルウェー側が主張するように、さすがにそんな理由だけで子どもが保護されてしまうだろうかという疑問も多く残るのは事実。

手で食事をあたえていることや、両親と同じベッドで子どもを寝かせていること、そしてデビカの夫は仕事人間で亭主関白な部分もあるため、常にというわけではないが、喧嘩をすると手を出したり暴言をはくことがある。

そもそも夫婦関係にも少し距離があり、意見の食い違いもたびたび発生し口論になることもある。それがネグレクトというのであれば、否定はできないし、確かに子どもにとって良い環境とは言い切れない部分もあるのも事実。

デビカが子どもを取り戻そうと必死になればなるほど、情緒不安定のように扱われ、切り取られた映像が裁判の証拠として提出されるなど、負の連鎖が続く中でどう着地するのかは見応えがある法廷劇となっている。

本当に今作のようにノルウェーの保育制度自体がかなり厳しい基準であるとするなら、インド移民どうこう関係なく、ノルウェーに住む人々の間でも問題になっているのかもしれないとも思うが、その一方でノルウェーの施設職員たちの外国人に対する偏見が根底にあるように描かれているようにも感じられるだけに、子育てや教育に関しても多様性を受け入れるべきだという結論にも意図的に向かわせている感じがしないでもない。

ラーニーはもともとコルカタ出身ということもあり、主人公と同じくベンガル語のイントネーションは全く問題ないが、それに加えてラーニーの演技力が試された作品としもいえるだろう。

いろいろと不安定な部分もある作品だが、ラーニーの演技力によってカバーされている。特によかったのが、英語があまりできない設定の役だが、子どもをどうにか取り戻そうと、つたない中学生レベルの英語で必死に伝えようとする法廷シーンだ。

国が定めたあやふやな「基準」に苦しめられる母親を描いた映画は今作だけに限らず多く存在している。例えば近年でいうと『ドライビング・バニー』などもそうだ。しかし一方で実際に育児放棄をしている親から子どもを守っているのも事実なだけに、線引きが非常に難しい問題である。

点数 80

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