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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ウィ、シェフ!』フランスが抱える問題をギミックとして取り込んだ社会派コメディ!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ウィ、シェフ!』フランスが抱える問題をギミックとして取り込んだ社会派コメディ!!

作品情報

一流レストランのスーシェフとして働くカティ。夢はいつか自分のレストランを開くこと。だが、シェフと大ゲンカして店を飛び出し、ようやく見つけた職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設だった。質より量、まともな食材も器材すらない。不満をぶつけるカティに施設長のロレンゾは少年たちを調理アシスタントにするアイデアを提案する。フランス語がちょっと苦手な少年たちと、天涯孤独で人づきあいが苦手なカティ。料理が繋げた絆は少年たちの将来だけでなく、一匹狼だったカティの世界も変えてゆく……。

『グレート・インディアン・キッチン(タミル・リメイク版)』レビュー

© Odyssee Pictures -Apollo Films Distribution -France 3 Cinéma -Pictanovo -Elemiah-Charlie Films 2022

閉鎖が決まったシェルターで生きる女性ホームレスと、ソーシャルワーカーたちの姿を描いた『社会の片隅に』のルイ=ジュリアン・プティが、同作の続編というわけではないが、実在するシェフのカトリーヌ・グロージャンの視点から「移民問題」を描いたのが今作。

フランスのポスタービジュアルからもわかるように、共通性をもたせていることから、ルイの描く「フランス社会問題」シリーズとでも言うべきだろうか。

エリート(もしくは自分をエリート)だと思っている主人公カティが、食材は缶詰やレトルト品ばかりでろくに無く、質よりも糧が求められるような120度違う環境で奮闘することで、大人に裏切られ、人を信用できなくなっている移民の少年たちと反発しながらも時間を共有することで理解し合い、結果的に自分自身の問題にも向き合っていく。

そういったプロットは、映画でもドラマでも世界的によくある人生の再生を描いたサクセストーリにありがちではあるが、そこに移民問題が絡んでくることで物語が重くなるかと思いきや、全体的にあくまでコメディという立ち位置をとっていることから、重すぎず軽すぎずという絶妙なバランスで構成されている。

『オーケストラ・クラス』や『パリ20区、僕たちのクラス』などのように、「移民問題」を扱いつつ、音楽やスポーツ、今作の場合だと料理というように、人生に目的を見出させることで希望に繋げる流れのサクセスストーリーは世界共通的に万人にうける映画といえる。

クライマックスでカティが自分の再起よりも少年たちの夢を優先させるために、テレビの生放送を逆手にとった行動は、ある意味反則的だと思うかもしれないが、メッセージを社会に届けることを優先に考えた行為だと思うと、感動しないではいられないだろう。

点数 80

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