作品情報
裕福な実業家の息子であるミッキーは、親友のマヌと一緒に別れさせ屋をしている。結婚を控えたマヌの独身パーティのためにスペイン旅行に行ったミッキーは、マヌの婚約者キンチの親友ティニと運命的な出会いをし、ふたりは恋に落ち、結婚を前提とした付き合いをするようになるが…….。
『Tu Jhoothi Main Makkaar』レビュー
「恋愛被害者の会」シリーズのルフ・ランジャンの新作であり、ランビール・カプールとシュラッダー・カプールの初共演作品として注目された今作。さらに映画プロデューサーとして知られるボニー・カプールが『AK VS AK』のように本人役ではなく、役者としてデビューを果たした作品でもある。
そして『恋愛被害者の会』『SKTKS〜お見合い大作戦〜』とルフの作品に出演してきたカールティク・アールヤンとヌスラト・バルーチャーがカメオ出演している。
シネコンや配信サービスの普及で映画の概念が変化し、無理に曲を入れなくてもいい風潮になりつつあり、ミュージカルシーンが減少傾向にあるボリウッド映画において、前半で3曲もぶち込んでくる景気の良い作品のように感じられる。
『ブラフマーストラ』もそうだが、『若さは向こう見ず』や『心~君がくれた歌~』など、やはりプリータムとランビールの相性は抜群であり、今回もランビールのスタイリッシュなダンスが映える楽曲が多く、シュラッダー演じるティニの登場シーンも見事。音楽の視点からは申し分ない。
ブラッド・ピットとサンドラ・ブロックが仕掛けたハリウッドの『ザ・ロストシティ』や『ブレット・トレイン』のように、景気のよかった頃のボリウッドを取り戻すことを目的として、あえてコテコテなボリウッド作品にしたもので、それを一周回って俯瞰的に楽しむものかとも思っていた。
ポスタービジュアルにあえて変な顔で写っているふたりを使っているのもそういったことをメタ的に楽しんでほしいというメッセージなのかとも思ったが、本編を実際に観てみると、どうもそうではなさそうだ……。
前半に3曲もあったというのに、中盤から後半になるところで「Show Me The Thumka」のシーンがあるだけで、その後はミュージカルシーンが全く無くなってしまう。それもふまえて前半のテンポ感が急に失速するようで、全体的な構成とバランスが悪い作品と言うしかなくなってきてしまう。
また構成の問題だけではなく、主人公ミッキーが別れさせ屋という特殊な職業であり、それを通じてコミカルなボタンの掛け違いコメディが展開されるかと思いきや、それは前半までのお話で、後半は男女の価値観や結婚観の違いと、そこに生まれる溝が描かれていて、職業としての別れさせ屋はどうなったのかわからなくなってしまう。
感情の揺らぎという点においては、なかなか繊細に描かれていて、感情むき出しのランビールとシュラッダーのふたりの演技は見どころではあるが、前半の景気の良さとどうしても比較してしまうと、あまりのトーン変化に困惑する。
その急激なトーンの変化が恋人と夫婦の境界線を描いているとすると、そうなのかもしれない。たとえそうだとしても、90分で描ける内容を無理やり2時間半に伸ばしているような感じがしてしまう。
ただミッキーの家族とティニの関係性がハートフルなものになっていて、家族総出の連携プレイでティニを空港まで追いかけるシーンは今作を支えている名シーンだといえるだろう。
点数 74
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