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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ボーンズアンドオール』カニバリズムをマイノリティとして受け入れますか??

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ボーンズアンドオール』カニバリズムをマイノリティとして受け入れますか??

作品情報

生まれつき、人を喰べてしまう衝動をもった18歳のマレンは初めて、同じ秘密を抱えるリーという若者と出会う。人を喰べることに葛藤を抱えるマレンとリーは次第に惹かれ合うが、同族は喰わないと語る謎の男の存在が、二人を危険な逃避行へと加速させていく……。

『ボーンズアンドオール』レビュー

『君の名前で僕を呼んで』(2017)のルカ・グァダニーノが描くカニバリズム・ロードムービー。とは言っても、「食人族」シリーズや『食人大統領アミン』、『八仙飯店之人肉饅頭』のような映画ではなく、実は『君の名前で僕を呼んで』に近いテーマといえるだろう。

多様性がうたわれる世の中で、カニバリズムというものを、ひとつのマイノリティのように描いた作品。LGBTQ+でいうなら”+”の中にカニバリズムも含まれるのではないかというような描き方をされている。

少数派であることに悩み葛藤し、自分探しをする。良くも悪くもグァダニーノ監督らしい作品なのだ。

今作に登場するキャラクターたちは、自分たちも理解できないほどに、強烈な人間を喰いたいという欲求が強い人々(一部目的に例外はあるが)の理屈ではない本能。

人間が牛や豚といった動物を食すように、その対象が人間であるというのは、私たちの倫理観のうえにおいては勿論犯罪行為としてあり得ない話になってくるかもしれないが、そういった衝動にかられる本能や運命、もしくは呪いのもとに誕生してしまったとしたら、それは罪になるのだろうか……。

時代によっては同性愛だって犯罪や病気とされてきた。緩和されてきたとはいっても、まだ最近の話で、今でもそうされている国や地域、宗教もある。

多様性を追い求めると、そこにも行き着いてしまうではないかという究極の問を人類に投げかけられているようでもあった。

受け入れられるマイノリティと、そうでないものが存在している、平等を求めている世界においても、そこからはじかれるマイノリティは必ず存在し、物理的に平等など不可能。そんなことを皮肉的に描く極端なものとして、カニバリズムが選ばれたということだろう。

また名優マーク・ライランスのねちっこい気持ち悪さが際立つ作品ではあるが、クロエ・ゼヴィニーが意外な役で登場するのは衝撃的だ……。

点数 82

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