ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『そして僕は途方に暮れる』現実逃避をし続けた先にあるのは希望か絶望か……。

この映画語らせて!ズバッと評論!!『そして僕は途方に暮れる』現実逃避をし続けた先にあるのは希望か絶望か……。

作品情報

自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年同棲している恋人・里美(前田敦子)と、些細なことで言い合いになり、話し合うことから逃げ、家を飛び出してしまう。その夜から、親友・伸二(中尾明慶)、バイト先の先輩・田村(毎熊克哉)や大学の後輩・加藤(野村周平)、姉・香(香里奈)のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、ついには、母・智子(原田美枝子)が1人で暮らす苫小牧の実家へ戻る。だが、母ともなぜか気まずくなり、雪降る街へ。行き場を無くし、途方に暮れる裕一は最果ての地で、思いがけず、かつて家族から逃げていった父・浩二(豊川悦司)と10年ぶりに再会する。「俺の家に来るか?」、父の誘いを受けた裕一は、ついにスマホの電源を切ってすべての人間関係を断つのだが……。

『そして僕は途方に暮れる』レビュー

夢を抱いて上京したものの、大学卒業後は鳴かず飛ばず。気づけば歳もそれほど若くない。バイトで食つなぐ日々がいつしか日常になってしまい、振り返っても何も成し遂げていない……。

世間のせいだ、環境のせいだ、親のせいだと八つ当たりしたところで現実が変わるわけでもない。そんな自分を受け入れるしかない。しかし、受け入れたくない。そんな間で葛藤し続ける人間の方が、現代社会においては圧倒的多数派ではないだろうか。

決して現実逃避自体が悪いことだとは思わない。ストレス社会、理不尽な社会システムにおいて、現実逃避することだって大事なはずだ。映画やテレビだって現実から少しでも離れられるものとして機能しているわけなのだから、もともと人間は現実から目を逸らすことは大切な行為のひとつと思っているはずだ。

ところが逃げると失うものが多くあるのが現実。愛や友情、信用など、人間関係という束縛が逃げ出すことさえ許されない環境を作り出しているが、そんなものさえも断ち切って、現実逃避をし続けたら、人間はどうなってしまうのだろうか……。いつかは行き止まりにたどり着くのか、それとも新たな道が切り開けるのか。行ってみないとわからないけど、行ってみたくない。

実家から逃げて都会で暮らしていても、逃げるとなると逆に逃げてきた場所に戻っていくのも皮肉なもので気付けば軽蔑していた父と同じになる一歩手前。

今作は現実逃避をし続けた結果、どうなってしまうのか、そんな終着点と代償を描いた、共感できる部分も多い作品ではある。しかし決して同じことをしたくないとも感じさせる、少し実験的でもある物語だ。

点数 82

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事