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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』なぜエンタメと伝記の中間的ぬるま湯映画に?!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』なぜエンタメと伝記の中間的ぬるま湯映画に?!!

作品情報

ホイットニー・ヒューストンはいかにスターダムを駆け上がり、時代を熱狂させた<グレイテストソング>はいかにして生まれたのか。すべての壁を超え、「歌いたい曲を自分らしく歌う」ことに命を燃やした先に、彼女は何を見たのか……。

『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』レビュー

個人的に今年最大の注目作だったと言っても過言ではなかった今作。

ミュージカル大好き監督ケイシー・レモンズによるホイットニーの伝記映画ということで期待値が大きすぎたのか、伝記映画としても弱くエンタメ性も薄い、微妙なラインの作品が出来上がってきてしまった。

そもそもこの企画自体がステラ・メギーを監督として進んでいたものが、方向性の違い降板し、その後任としてケイシー・レモンズが抜擢されたわけだ。これはあくまで推測になってしまうが、 版はもっと薬物関係の闇が濃く描かれていたのではないだろうか。もしくはその逆かもしれないが、ステラ・メギーの過去作 『ザ・フォトグラフ』『エブリシング』を観ても前者のような気はする。

脚本自体がエンタメ路線というより、闇を深堀りするようなテイストだったものに、遺族や製作サイドが口を出して、ケイシーがエンタメ要素を盛り込んだという感じに思えてくる。その結果として、微妙な作品に仕上がってしまっている残念な作品だ。

アレサ・フランクリンもエルヴィス・プレスリーも観客がある程度の知識レベルであることを前提に物語が展開されてくのは、今作でも同様であって、ホイットニーを知らないと、シーンとシーンの間の出来事がかなり省かれているため、どうなっているのか理解できないシーンも多いだろう。

両親の関係性の変化や何がきっかけでドラッグに手を出してしまったか、そしてケイシーの得意とする黒人にとっての信仰心、白人ポップスのような曲と黒人サイドからの批判があったこと。何よりクレイヴ・デイヴィスとの関係性が控えめに描かれていて、ホイットニーというアーティストを形成するうえで必要性の高い要素が、かなりざっくりしているのも問題なのだ。

しかしドラマ性が薄くても、エンタメ要素さえ強ければ機能するわけだ。『ドリームガールズ』か『スパークル』のように、史実よりもエンタメ性でカバーするのは伝記映画としては、全然アリなのだが、今作は、両方をやろうとしてバランスが崩れてしまっているようにしか思えない。

当然ながらケイシーによる歌唱シーンの演出は見事といったところで、感動ポイントは何度もあるし、1991年のスーパーボウルでの国家独唱の臨場感や1994年のアメリカン・ミュージックアワードで歌った「ドリームガールズ」の楽曲「And I Am Telling You I’m Not Going」のカバーで締めくくるというのは、憎い演出だが、もっと曲中心のミュージカルで構成した方が良かったのではないだろうか。

非常におしい映画となってしまった……

点数 80

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