作品情報
ハーパー(ジェシー・バックリー)は夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)の死を目の前で目撃してしまう。彼女は心の傷を癒すため、イギリスの田舎街を訪れる。そこで待っていたのは豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリー(ロリー・キニア)。ハーパーが街へ出かけると少年、牧師、そして警察官など出会う男たちが管理人のジェフリーと全く同じ顔であることに気づく。街に住む同じ顔の男たち、廃トンネルからついてくる謎の影、木から大量に落ちる林檎、そしてフラッシュバックする夫の死。不穏な出来事が連鎖し、“得体の知れない恐怖”が徐々に正体を現し始める……。
『MEN 同じ顔の男たち』レビュー
心に傷を負ったとしたら、癒されたいとのが自然な感覚かもしれないが、それは一時的に蓋をするだけで、根本的な解決ではない。
それでは傷で傷を癒すというのはどうだろうか。毒には毒、トラウマにはトラウマといったように、それ以上の衝撃によって浄化させるという治療法も実際に存在している。
ところがそれに加えて、恋愛もそうだが、人間関係自体が視点を変えると加害者にも被害者にもなり得るというメッセージも秘めているように感じられた。
今作の主人公ハーパーは夫ジェームズの自殺を目撃したことで、夫の幻影が付きまとい、それがトラウマとなっている。罪悪感と共に自分を正当化したいという意識もあるようにも感じられる。
私たちは映画を観る際に、どうしても主人公の目線を通したものが真実だと錯覚しがちだし、それが女性だったり病人であると説得力は増したりもするわけだ。しかし、それはあくまで個人の目線であることでしかなく、実際にどうだったのかはわからない。
今作では夫ジェームズが誇張された存在として映し出されるが、ジェームズの人間性が、実際にそうだったのかもわからない。つまり今作に登場にする同じ顔の男たちは、ハーパーの目を通して見た男性に対しての屈折したイメージの具現化の可能性もあるのだ。
心の傷を負わされたという、あくまで被害者意識でいるハーパーに同じ顔の男たちが迫ってくる。実際に完全なる被害者だったのかもしれない。明確な答えは提示されないが、それを探りながら観るのも今作の醍醐味である。
また同じ顔の男たちを演じているロリー・キニアの顔が、もともとジェシー・バックリーに少し似ているだけに、ハーパーの顔にも見えてくるところがより怪奇劇場感を増している。
とにかく言えることは、気持ち悪さは全開な作品だということ。
点数 80
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