作品情報
太平洋岸の孤島を訪れたカップル(アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト)。お目当ては、なかなか予約の取れない有名シェフ(レイフ・ファインズ)が振る舞う、極上のメニューの数々。 「ちょっと感動しちゃって」と、目にも舌にも麗しい、料理の数々に涙するカップルの男性に対し、女性が感じたふとした違和感をきっかけにレストランは徐々に不穏な雰囲気に。 なんと、一つ一つのメニューには想定外の“サプライズ”が添えられていた… 。果たして、レストランには、そして極上のコースメニューにはどんな秘密が隠されているのか?そしてミステリアスな超有名シェフの正体とは…?
『ザ・メニュー』レビュー
「美味しんぼ」や「ミスター味っ子」のような、奇抜なグルメ漫画を映画化したような作品かと思わせておいて、実はがっつりホラーな今作。それもそのはずで、プロデューサーとして入っているのが、アダム・マッケイ。
アダム・マッケイといえば、近年のテイストとしては、ジャンルに問わず政治・社会風刺をストーリーの構造上に組み込ませてくる作風であり、さらに監督を務めたマーク・マイロッドという人物もくせものだ。
コメディ出身者がホラーやスリラー的なものを制作すると、スプラッターやスーパーナチュラルのようなジャンルホラーではなく、身近にあっても不思議ではない、絶妙なラインの恐怖に仕上げてくるのも特徴的だ。日本のお笑いとは違い、政治に直通するようなものが多いことからも、笑えないことをコメディとして変換するという行為自体が、実は社会悪と近しい場所にいて見えているものは、まさにホラーなのかもしれない。
富裕層が味わいたいのは、自分の立場や富に対する待遇だけであって、肝心の味など誰も味わっていない。高ければ高いほどに、料理を食べるという行為が、もはや本来の意味を失ってしまっているのではないだろうか……。
そんな富裕層、グルメぶった著名人を粉砕するようなリベンジものといえば、それに違いはないのだが、個人個人ではなく、そういったシステムを作り出してしまった社会や、そんな風潮に屈した料理人たちへのアンチテーゼともなっていて、ストーリーの構造しては、なかなかシンプルではあるものの、「食」を通して、人間の醜さや闇が浮彫にされていくようで、見事なまでに居心地の悪い作品に仕上がっている。
ただ、恐怖で支配されているからといっても、行動原理につじつまが合わないというか、あまりにも潔い部分が多いのは、ご都合主義なものを感じずにはいられない。
点数 82
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