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この映画語らせて!ズバッと評論!!『人生は二度とない』インド映画のステレオタイプと戦い続けてきたゾーヤー・アクタルの挑戦がここにある!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『人生は二度とない』インド映画のステレオタイプと戦い続けてきたゾーヤー・アクタルの挑戦がここにある!!

作品情報

大富豪の娘との結婚を目前にしたカビール(アバイ・デーオール)、金融ブローカーとして富を求めるアルジュン(リティク・ローシャン)、皮肉屋のコピーライター、イムラーン(ファルハーン・アクタル)の学生時代の仲良し3人組は、カビールの独身さよなら旅行として3週間のスペイン縦断の旅に出る。 仕事で成功を収めて、不自由なく生きているが、それぞれが悩みや葛藤を抱えていた3人。しかし、道中の出会いや冒険が、彼らに人生の意味を問いかけ、やがて本当に大切なものを見出していく。

『人生は二度とない』レビュー

ガリーボーイ』『鼓動を高鳴らせ』のゾーヤー・アクタルの2011年の作品が今になって一般劇場公開となった。以前『人生は一度だけ』というタイトルで限定上映されていたものと同じものである。

物語としては、それぞれの事情を抱える男の3人組が、バチェラーをかねてスペインに旅立つロードムービーで、明らかに「ハングオーバー!」シリーズを意識している作品だ。

逆にアメリカやイギリス映画として観ると、ストーリーとしては平凡でなかなかベタなものかもしれない。ところが、これがインド映画というのが素晴らしいのだ。

……別にインド映画だからと手放しで褒めているわけではない。インド映画でも酷い作品はいっぱいある。

『鼓動を高鳴らせ』などを観てもよくわかるが、ゾーヤー・アクタルは、常に世界に目を向けてきた監督で、『ガリーボーイ』こそインドが舞台ではあったが、変化するインドの”今”を描いているようにも感じられた、つまりステレオタイプからの脱出をこころみた監督のひとりだ。

先日の「アフター6ジャンクション」の中でも少し触れたが、2000年代後半から2010年代にかけて、インド映画界にも女性の映画人が多く活躍できる場が広まりはじめた、そんな過渡期を象徴するような女性監督のひとりでもある。

それと同時にこの監督の特徴ともいうべきか、まだまだキスシーンや性描写がうるさかった映画界において、直接的性描写はないにしても、キスシーンは普通に取り入れてきた先駆者でもあるのだ。

舞台がスペインだから緩和されたかというと、実はそうではなくて、カラン・ジョーハルの『さよならは言わないで』はニューヨークを舞台にしていたが、性描写は少しあったものの、キスシーンはなかった。どこを舞台にしたところで、インド国内で、特に対象の年齢層が幅広い作品は、なかなか難しいものがあったのは事実だ。

もちろん他にも『Judwaa 2』や『2 States』など、キスシーンのある映画は少なからずあるし、最近は普通になっている。リティクはキス魔としても知られているほどだが、キスシーン=自由恋愛の象徴として、インドでも海外文化と密接にリンク(特に若者の間)している現状を世界に伝えようと奮闘したと意味において、ゾーヤーにとってのキスシーンは、単純にその行為がどうこうというよりも、その先にあるものを見せているのだ。

今作もマサラ映画ではないが、リティク・ローシャンカトリーナ・カイフ、そしてゾーヤー・アクタルの親族でもあり、『ミズ・マーベル』にも出演したファルハーン・アクタルといえばボリウッドでも大人気俳優なだけに、客層は幅広いはずだ。しかも2011年という段階で、ここまで普通にキスシーンを盛り込んでくるのは、画期的だといえる。

それと忘れてはならないし、日本の公式サイトにもなぜか名前が載っていないのが不満でならないが、カルキ・ケクランを忘れてはならない。『イエローブーツの娘』の翌年に出演していたことだけあって、まだまだ初々しさが残っているが、今作の中で紛れもなく重要なキャラクターだし、本国のポスターもカルキ・ケクランはメインキャストして並んでいる。

ガリーボーイ』や『マルガリータで乾杯を!』『若さは向こう見ず』など、日本公開された作品にも出演しているのだから、この扱いは酷い!!

点数 79

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