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この映画語らせて!ズバッと評論!!『七人の秘書 THE MOVIE』圧倒的に増したテレ朝ドラマ感!でもそれがいいの!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『七人の秘書 THE MOVIE』圧倒的に増したテレ朝ドラマ感!でもそれがいいの!!

作品情報

熾烈な戦いの末に政界のドンを辞任に追いやった秘書たちは、今日もラーメン萬で平和な日々をかみしめていた。そんな彼女たちのもとに新たな依頼が舞い込む。今度のターゲットは信州一帯を支配する「九十九ファミリー」。表の顔は経済を潤してくれる地元の名家だが、実はその裏の顔は国家と繋がり私腹を肥やすためには手段を厭わない極悪一家だった……。過去最大の悪人を懲らしめるため、雪深き地へ向かった七人。しかしそこで彼女たちを待ち受けていたのは、絶体絶命…史上最高難易度の任務と、決して知られてはいけない秘密だった!

『七人の秘書 THE MOVIE』レビュー

視聴率はそこそこ高かったのにも関わらず、コロナ過のドラマがゆえに全8話という消化不良な感じで終了してしまった「七人の秘書」が映画化。

もともと「科捜研の女」や「相棒」といったテレ朝臭漂うドラマではあったものの、さらにサスペンス劇場感も加わったことで、そのイメージは強固なものとなった。

平均視聴率14.5%という高視聴率ながら、コロナ過に制作された作品ということもあり、全8回で終了してしまった「七人の秘書」の待望の続編が『七人の秘書 THE MOVIE』として、10月7日から公開される。ドラマ最終回後から2年が経過し、劇場版と直結するテレビスペシャルも10月2日に放送され、再び個性的な七人の活躍を再び観ることができる。

またドラマ版に続き田村直己が監督、中園ミホが脚本を務めることで、テレビ朝日ドラマならではの安定・安心感もそのまま引き継がれている。

社会構造の裏側で渦巻く腐敗、権力、そしてジェンダーギャップにメスを入れた社会派な作品というドラマシリーズのテイストはそのままに、劇場版では、謎解きミステリー、サスペンス劇場の要素も加わり、一気にテレ朝の連続テレビドラマ色を強くしている。

旅先、地方で事件に巻き込まれるというサスペンスの典型的なお決まりパターンであり、テーマやパッケージとしては、ありがちで。サスペンス好きであれば事件の黒幕は、すぐわかってしまうはずだ。しかし、決してそれが悪いというわけではなく、「科捜研の女」や「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」「相棒」シリーズなどのように、長寿シリーズとして残り続けて欲しいという哀愁がすでに漂っているのだ。

よく日本映画に対して、テレビドラマの延長線上のような作品だという皮肉的な言い方があるが、今作においては、それこそが大きな安心感、安定感に繋がるプラス要素である。つまりこれで良いのだ。

去年公開された『科捜研の女 劇場版』に、中途半端な映画的スペクタクルを求めていないように、ぬるま湯につかっているような状態で、ずっと観ていたいと思う温度感こそが、丁度いい作品という証拠。

女性陣が色気を使って潜入するスパイアクションの「チャーリーズ・エンジェル」や日本でいえば「プレイガール」シリーズのような、今では時代錯誤な系統の作品でありながら、同時にジェンダーギャップを描くことで、あえて時代と逆行したテーマを程よく現代的にアレンジ。

そんな中に、時おり重圧なテーマが隠されている。今作においては、リゾート・レジャー施設開発の影に渦巻いている政治家や悪徳弁護士の癒着、地方の雇用問題、そして慈善事業という表の顔の裏にある環境・貧困ビジネスなどが描かれているが、決して説教臭くない。そういったテーマは、現実社会において解決できることではないだけに、グレーなものはグレーとして蔓延るもどかしさも描いているのが妙にリアルだったりする。

それでも社会派に向き切っていないのは、「特捜9」や「刑事ゼロ」なども手掛けてきた田村直己監督、そして「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」シリーズの脚本家中園ミホならではテレ朝印の安定・安心感を引き立てているからだろう。

ドラマ版同様に、それぞれのキャラクターの個性がわかりやすいのは良いとして、戦隊ヒーローのようなテイストも入っているのは、少し劇場版をはき違えている感じがしないでもないが、「仮面ライダーカブト」や「仮面ライダージオウ」などの平成ライダーシリーズを多く手掛けてきた田村直己監督ならではの演出なのかもしれない。

この安定・安心感は、テレ朝の連続ドラマシリーズとしては相応しく、何年も続いてもらいたいと思える、そんな作品だ。

点数 77

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