第 72 回カンヌ国際映画祭の脚本賞とクィア・パルム賞を始め、各国の映画賞を 59 受賞し、157 ノミネートを果たすという偉業を成し遂げた『燃ゆる女の肖像』。すべてのカットに美が宿る完璧な映像と忘れ得ぬ愛の物語を、世界中の数多くの人々が「生涯の一本」として、感動に震える胸に刻み付けた。その名作を生み出したのが、セリーヌ・シアマ監督。デビュー作の『水の中のつぼみ』でセザール賞新人監督作品賞にノミネートされるなど、本国フランスではその眩いばかりの才能が早くから評価されてきた。そして今や、困難な時代を生きる私たちにエンターテインメントで光をもたらす存在として、深い共感とリスペクトを集めている。
そんなシアマ監督が、真骨頂である女性の深淵を描きつつ、全く新しい扉を開く最新作を完成させた!
ベルリン国際映画祭で上映されるや、「大傑作!」と熱い喝采を浴び、次々と映画祭に招かれるたびに賞のカウントを増やし、英国アカデミー賞にもノミネートされた『秘密の部屋の、その向こう』がついに日本を圧倒する。
シアマ監督自らが担当した、こだわりの衣装!!
主人公のネリーの“おばあちゃんの家”は、シアマ監督の注文に従って、スタジオ内にセットとして作られた。
照明のスイッチの形や位置、窓のサイズに至るまで細かな指示を出したというシアマ監督は、「セットを作る仕事は、すべての方向性を決めることになるから、撮影監督のクレア・マトンと綿密に議論したわ。カーペットや壁紙の色は、映画全体の配色を考慮しながら決めた。廊下の長さは、トラッキングショットや登場人物のリズム感に関わってくる。床材を何にするかで足音も決まるわ」と解説する。
また、シアマ監督自身の祖母の家の特徴が部分的に取り入れられた。たとえば、アパートと同じように転々と引っ越す人が住むような家というイメージがそれだ。
さらに、自分ごととして捉えてもらうために、20世紀後半のフランスでよく見るインテリアを飾り、誰からも馴染みのある空間に仕上げた。おばあちゃんの家の外観と森は、シアマ監督が育った町で撮影された。
ここでも監督のイメージに従って手が加えられた。たとえば、真っ赤に染まった秋の森にするために、押し葉を使っている。「子供時代を過ごした森に、大人たちが小屋を建てるのを見られるなんて、とても素晴らしい一週間だったわ」とシアマ監督は感慨深げに語る。
本作の時代背景は正確には定められていない。今の子供たちにはもちろん、1950~1980年代に子供だった人々にも自己投影してもらいたいと考えたからだ。
数十年にわたる世代の人々に共通の時間感覚を持ってもらうために、特に留意したのが衣装だった。
シアマ監督自らが衣装も担当し、1950年代から現代までの小学校のクラス写真を吟味し、各世代の子供たちが着ている服の共通点を探し、そのポイントを網羅した衣装を選んだ。
監督・脚本:セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』
撮影:クレア・マトン『燃ゆる女の肖像』
出演:ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカルほか
提供:カルチュア・エンタテインメント、ギャガ 配給:ギャガ
原題:Petite Maman/2021/フランス/カラー/ビスタ/5.1ch デジタル/73 分/字幕翻訳:横井和子
© 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
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