作品情報
8歳のネリーは両親と共に、森の中にぽつんと佇む祖母の家を訪れる。
大好きなおばあちゃんが亡くなったので、母が少女時代を過ごしたこの家を、片付けることになったのだ。だが、何を見ても思い出に胸をしめつけられる母は、
何も言わずに一人でどこかへ出て行ってしまう。残されたネリーは、かつて母が遊んだ森を探索するうちに、自分と同じ年の少女と出会う。母の名前「マリオン」を名乗る彼女の家に招かれると、そこは“おばあちゃんの家”だった――。
『秘密の森の、その向こう』レビュー
『トムボーイ』『燃ゆる女の肖像』など、繊細な心の揺らぎを映像として映し出すことが得意なセリーヌ・シアマの監督最新作。
さらに『燃ゆる女の肖像』でも撮影監督を務めたクレア・マトンとのタッグが再実現。ちなみにクレア・マトンは10月に日本でも公開される『スペンサー ダイアナの決意』でも撮影監督を務めている。
セリーヌといえば、自信も同性愛者であることから、性に対する戸惑いや葛藤などを自然に描くという印象も強いだろうが、ファンタジー要素も自在に操る監督でもある。
ファンタジー要素しては、クレイアニメの『ぼくの名前はズッキーニ』に通じる部分もあるが、今作のテーマとしては、子どもが体験する大切な人との別れ、そしてその感情をどう心の中で処理するのということを、あくまで子どもの目線から描いた作品となっており、そこにファンタジー要素を加えながらも繊細に描いていく。
当然ながら、感情の揺らぎというのは、カメラに映るものではないが、セリーヌ・シアマは、それが目に見えるもののように演出し、はっきりと映し出してくれるところが見事。
セリーヌとクレアのタッグは最強ともいえる。
いつものテイストでありながら、どこか不思議な感覚にもなるという、新たなセリーヌ演出の一面を見ることができる。
さらに説得力を加えているのが、主演の子役の存在感だ。
主人公ネリーを演じるジョセフィーヌ・サンスと、8歳の母マリオンを演じるガブリエル・サンスのふたりは本当の双子であり、これまたカメラには映らない”絆”という抽象的なものが映っているように感じのは、そこに本当の姉妹の絆が存在しているからなのだ。
点数 88
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