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この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)『ドライビング・バニー』ただ子どもと一緒に生活がしたい、それだけなのに……。

この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)『ドライビング・バニー』ただ子どもと一緒に生活がしたい、それだけなのに……。

作品情報

ニュージーランド、オークランド。信号待ちの車がびっしりと並ぶ交差点に、バニー・キングはいた。娘のシャノンの誕生日までに新居へ引っ越すと決意したバニーは、明るい笑顔と気の利いたトークで車の窓拭きをして小銭稼ぎをしている。夢は家族水入らずの生活を再開させること。まだ幼いシャノンの誕生日パーティも盛大に開きたい。しかしある事情から、今は家庭支援局で行われる監視付きの面会交流で我慢するしかない。幼いシャノンは大好きなママに甘えてくるが、思春期の息子、ルーベンは微妙な態度だった……。

『ドライビング・バニー』レビュー

虐待などの場合を除いて、多少貧しくたって、子どもにとって親と一緒に過ごせることが幸せなはず。

それでも経済的に困窮している貧しい環境よりも、整った環境で育って欲しいという考えも一方である。どちらが正しいかは判断できるようなことではないが、そこに子どもの意思は不在だったりもする。

国や地域によって、制度というのも様々で一概には言うことができないが、一度手放してしまうと、例え血が繋がっている本当の親子であっても、子どものためと言い張る制度によって引き離されてしまう家族もいるということだ。

日本においても片親の家庭だったり、生活保護といった制度を使えば、よっぽどのことがなければ子どもと離れ離れになることもないし、最低限の生活はできるはずが、問題なのはこちらから言わないと動いてくれないし、教えてくれないという不親切さだ。

今作の主人公バニーの場合においても、そういった別の支援があったかもしれないが、それを教えてくれたり、協力してくれる人があまりにも少なく、一方的で周りの見えない視点に陥ってしまうのは、本人の無知ゆえかもしれないが、周りの社会の責任でもある。

バニーは無知で不器用かもしれない。しかし、バニーの想いは、ただ自分の子どもと生活がしたい……。それが無理なら誕生日だけ祝ってあげたい、電話だけでもしたい……。それだけなのに。

そんなバニーに、なぜトーマシン・マッケンジー(『オールド』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)が演じる姪トーニャが寄り添ってくるのかという部分にも大きな意味があって、トーニャは罪悪感を抱えながらバニーに感謝もしている。(それが何故かと言ってしまうとネタバレになってしまうから避けておくが)

だからこそバニーを助けてあげたい。しかし、何もしてあげることができないもどかしさ、そして無力さを痛感するトーニャの気持ちも交差する。

負のサイクルから抜け出せず、チャンスを逃し続けてしまうバニーの奮闘を描いていて、それでいて社会の現実が容赦なく突き刺さる、そんな作品だが、そこにトーニャの優しさが、かすかな希望として残る。

また、冒頭でエッシー・デイヴィスの姿を見ると、どうしても『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』の毒親を想像してしまうが、その見た目や想像で判断する意識も今作では問題提議されているのだ。

点数 83

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