作品情報
ペットシッターのアルバイトで、人里離れた豪邸を訪れた盲目の少女ソフィ。視覚障がいを逆手に取り、金目のものを盗み出そうとしていた。ところが日没後、武装強盗が屋敷内に侵入する。目的は、壁に隠された巨大な金庫だ。命の危険を感じたソフィは、視覚障がい者サポートアプリ《シーフォーミー》を起動し、元軍人で FPS ゲームの熟練プレーヤーのケリーに助けを求める。圧倒的に不利な状況下、侵入者の攻撃から身をかわしていくも、バッテリー残量は容赦なく減っていき…。ケリーの“目”を失った時、ソフィが生き残る方法はあるのか…….。
『シーフォーミー』レビュー
偽善者ほど障がい者をいたわっているようで、実は自分のイメージを良くみせようとしているだけだったりする。
障がいを持っている人を聖人して描く必要があるのか、逆に障がいを利用して、人間臭く、欲望などの汚い部分を描くことこそが、本当の”差別をしない”ということではないだろうか。
今作の主演であるスカイラー・ダベンポートも、実際に視覚障がいを抱えている女優でありながらも、自分を障がい者という枠組みに入れられることを拒み、ステレオタイプなイメージから抜け出そうしている張本人であり、そんな彼女の意思が今作には強く反映されているといえる。
視覚障がい者を主人公として、その目線を利用した作品は『ドント・ブリーズ』や『サイトレス』『見えない目撃者』など、いくつもあるが、当事者が演じるというのはかなりの説得力だ。
富裕層の旅行中に猫シッターを頼まれたソフィは、障がいを利用して、盗みをはたらき転売するという行為を繰り返していたが、そこに強盗が入ってくる。助かるために協力を申し出て、さらに自分を仲間にしてもらい分け前を貰おうとする。
卑怯に感じるかもしれないが、いつ殺されるかわからない恐怖を引きずるよりも、助かるために犯人側に寄り添おうとするのは、賢い手でもある。同じような状況が描かれた映画の中で、バカ正直であって殺されるよりも、一度乗っかって油断させればいいのに……と思ったこともあるはずだ。
しかし誤算の連続で、被害者も出てしまい、良心の呵責が常に彼女を苦しませる。そんな心理描写がなかなかリアルに描かれているし、ミリタリーゲーマーがプレイヤーのようにソフィを操作して敵を倒していくという構図は斬新さは感じる。
またスカイラーは、アニメの吹替え声優であると同時に「ファイナルファンタジーVII リメイク」や「アニマ:ゲートオブメモリーズ」といったゲームの声優も多く務めているだけに、よりゲーム感が増しているのだ。
ただソフィと同じ視点を演出するために、画面が暗かったり、全体的に展開が地味。結末的にはちょっと弱い感じもするし、所々で危うい部分も多かったりもする。どうしても低予算ホラー臭は隠しきれていない。
しかし、ステレオタイプを突き崩そうというスカイラーの意思はすごく感じとれる作品だといえるだろう。
点数 83
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