作品情報
とある孤島で生活をする二人の男と一人の女。「ニコニコ人生センター」という宗教的な団体に所属している3人は、「孤島のプログラム」と呼ばれる無人島での共同生活を送り、<安住の地>へ行ける日に思いを馳せていた。3人は本名を捨て、男の 1 人(磯村勇斗)は「オペレーター」、女(北村優衣)は「副議長」、もう 1 人の男(宇野祥平)は「議長」と名乗り、互いにそう呼び合っている。笑顔を表す顔文字のようなものがプリントされた揃いの T シャツを着て、毎日決められた「プログラム」に従って、規則正しい生活を送っていた。起床すると地面に腰を下ろし、それぞれの脚を伸ばし三角形を描くように足裏を合わせ瞑想。その後、簡素な朝食を囲み、それぞれ昨晩に見た夢の内容を報告しあう。かと思えば、今度はお互い頭に浮かんだ記号をホワイトボードに書き付け、そのイメージが通じ合っているかを確かめるテレパシーの実験のようなことを始め出す……。
『ビリーバーズ』レビュー
オウム真理教や連合赤軍、人民寺院、マンソン・ファミリーなどの新興宗教やコミュニティをモデルとした漫画「ビリーバーズ」は、日常からは切り離された環境の中で信仰心と欲望のどちらが勝るのかというような実験要素を詰め込んだ作品だ。
そういったカルトやコミュニティの儀式は、俯瞰的に見ると滑稽でバカバカしいものに感じずにはいられないものの、それを意味あるもの、大切なものだと認識してしまうほどにマインドコントロールされてしまう状態というのは、恐ろしくもあり、人間の精神構造がいかに繊細で脆いものだということを痛感させられてしまう。
そこにエロスの要素を組み込ませたといわれているが、ヒッピーのコミュニティや、それこそマンソン・ファミリーは、フリーセックスや乱交を儀式的に行っていただけに、その要素こそもカルトである。今作が特徴的なのは、そこにソリッド・シチュエーション・スリラーの要素が加わっていることだ。
食料や物資が定期的に届くかもわからない、外部の情報もわからない……という極限の状況下で、夢と現実、信仰と欲望の境界線が揺らぐ中にいる、男ふたりと女ひとりの実験的要素もスリリングで見応えがあるし、性犯罪者の心理にあまりにも近づき過ぎているという危険性もある。
さらに今作の監督である城定秀夫は、ピンク映画やお色気シーンのあるVシネ系出身の映画監督だ。そんなシチュエーションを柔らかく、観た人になんとなく想像させるといった、生易しい描写なんてするはずもない。
出演者がB級俳優であれば、それも予想できたと思うが、今作に出演している磯村勇斗や北村優衣は、あえてそこに冒険するような立ち位置の俳優ではないだけに、今作での体当たり過ぎる演技には驚愕するだろう。
特に北村優衣は、後半はヌードになっている時間の方が多いのではないかと思うほど。
確実に言えることは、家族で観るような映画ではない!
点数 80
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