作品情報
主人公のソーはアベンジャーズ最強の雷神──のはずが、多くの仲間と愛する家族を失ったトラウマから、いつしか戦うことに憶病になってしまった。「ヒーローは卒業だ」と宣言し、「自分は何者か」と真剣に問いかけるが、そこは常にノープランなソーは“自分探し”に迷ソーする。思えば、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でサノスを止められず、後悔から酒浸りと引きこもりの日々を送り、激太りになったこともあったソー。神でありながら人間味に溢れた性格で、アベンジャーズで最も愛されるキャラクターでもある。そんなソーの前に新たなヒーローとして現れたのが、ソーの元恋人で好奇心旺盛な天文学者のジェーン。かつて地球に追放されたソーと出会い恋におちたが、恋愛よりヒーロー業を優先するソーとの超遠距離恋愛はうまくいかず別れてしまう。研究に邁進しているはずのジェーンが、選ばれしヒーローにしか持ち上げることのできない高潔なハンマー〈ムジョルニア〉を操る〈マイティ・ソー〉として登場! 粉々に破壊されたはずの〈ムジョルニア〉が、なぜジェーンの手に? そして彼女への未練 100%のソーとの再会の行方は?さらに“2 人のソー”に襲いかかるのは、全宇宙の神々滅亡を企てる“神殺し”のゴア。この 3 人を軸に、〈ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー〉の愉快なアウトローたちが物語をかき回し、神の上に立つ神、全知全能の最高神にして自堕落なゼウスも降臨。何をしでかすか、全員が予ソー不可能なキャラクターたちが集結!
『ソー:ラブ&サンダー』レビュー
マーベル・シネマティック・ユニバースの最新作にして、「ソー」シリーズ第4弾。今回はシリーズを増すごとに雑な扱いとなっていたジェーン・フォスターが再登場し、原作の通り新たなマイティ・ソーに変身することになるというのが一番大きな着目点である。
しかし、コミックでの経緯を知っている人だったら、それは同時にジェーンが癌に犯されることを意味しているとわかるだけに複雑な心境になるところだが、案の定、そこは原作通りの設定を取り入れている。
ジェーンがマイティ・ソーになっているときは癌の苦しみが軽減される一方で、元に戻ったときの反動が大きく、癌と戦う体力や免疫さえも消費してしまう状況の中で、愛する人のために命をかけて戦うという、ヒーローポジションをジェーンが担うというのは非常に大きな意味がある。
近年のMCUは、ジェンダーレスに拘っていて、同性愛なども緩和されつつあるし、今作においても、『マイティ・ソー バトルロイヤル』では、連想させるシーンが丸々カットになっていた、ヴァルキリーのバイセクシャル設定が普通に盛り込まれている他、ゴーグも同性愛(そもそもそういった概念がない種族なのかもしれないが)が描かれている。
ジェーンはバイセクシャルや同性愛者ではないが、女性とか男性とか関係ない。それこそ国籍や肌の色さえも。誰もがヒーローになることができるという、MCUにおいての新たな概念、メッセージ性を、今までマッチョなヒーローに助けられ、良くてサポートに回るサブ的な存在であったジェーンに託したことで、説得力が増している。
さらにジェーンを演じているナタリー・ポートマンは、ずっと映画業界のマスキュリズム(男性優位主義)と闘い、風穴を開けようと奮闘してきた活動家でもあるだけに、今作でその努力が報われたということだ。完全に今作の主役はジェーンである。
一方、忘れてはいけないのが、2013年に出版されたシリーズ「ソー:ゴッド・オブ・サンダー」で初登場した、割と新しい人気キャラクターのゴア・ザ・ゴッド・ブッチャーを、カメレオン俳優であるクリスチャン・ベールが演じているということだ。思った以上にクリスチャン・ベール色が強く、ビジュアル的な部分としては、少し残念ではあったが……。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のラストで、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのチームに加わるかたちで地上を離れたソーの、その後すぐが描かれていることもあって、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2.5』といった側面からも観ることができるのは嬉しい限りだ。
とにかく全体を通して、今回はナタリー・ポートマンの映画だ。
点数 82
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