作品情報
小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。
『女神の継承』レビュー

当初は『哭声/コクソン』の続編もしくはスピンオフしてスタートした企画だったものが、祈祷師のモキュメンタリー作品になったもの。
タイの極端な田舎が舞台となっていることもあって、何も起こらなくても田舎特有の不気味さもあるし、時代がズレているのではないかと思うほど、遅れた価値観や概念というのも恐ろしいというもの。
ジャンルとしては、スーパーナチュラルホラーではあるものの、祈祷師に密着ししている様子は、カルト宗教密着のような感じでもあり、発言自体が信用できなかったりもする。
そう思い始めると怖いのやら、怪しいのやら、一周回って滑稽で喜劇的であるようにも感じてしまう。何を疑って、何を信じるかが鍵になってくるわけだが、今作はそれが意図的なのか、何なのかわからなくされている。
本当に能力があるのか、それとも信じ続けているだけで、神に縋っているだけなのか、今までは本当に霊なのか、ただの生活習慣病や気のせいなのか、バカな老人の不注意なのか(自分でつけたコブラ酒を飲んで体が動かないという相談があったから……)というものに、祈祷師の名のもとにお祓いをしてきたわけだ。
しかし今度は、その前に命の危険性すらある本格的な悪霊のようなものが立ち塞がったとき、確信のもてない神の存在を崇拝し、信じ続けて戦いに挑むことができるのか、それとも、現実的な恐怖にたじろいでしまうのか……
単純に何かが取りついて除霊するような「死霊館」シリーズ的なスタイルでありなりながらも、もうひとつのテーマとして、信仰の先に神は存在しているのだろうか…..というような神の存在の有無を描いているようでもある。
あくまで怖い作品を作っているのだろうけど、真剣に観ていられないおバカ映画要素も十分にあったりすることからも、制作サイドとしては、「これをこうしてみたら?」とか「こんなところにコレ置いてみたら?」とか、なんとなく楽しそうにしてたんだろうなぁ~といった、物作りの自由さも感じられる作品である。
点数 77

コメントを書く