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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ニューオーダー』フィクションと言い切れないリアルな恐怖が突き刺さる!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ニューオーダー』フィクションと言い切れないリアルな恐怖が突き刺さる!!

作品情報

夢に見た結婚パーティー。マリアンにとって、その日は人生最良の一日になるはずだった。裕福な家庭に生まれ育った彼女を祝うため豪邸に集うのは、着飾った政財界の名士たち。一方、マリアン宅からほど近い通りでは、広がり続ける貧富の格差に対する抗議運動が、今まさに暴動と化していた。その勢いは爆発的に広がり、遂にはマリアンの家にも暴徒が押し寄せてくる。華やかな宴は一転、殺戮と略奪の地獄絵図が繰り広げられる。そして運良く難を逃れたマリアンを待ち受けていたのは、軍部による武力鎮圧と戒厳令だった。電話や通信網は遮断され、ついさっきまで存在していたはずの法と秩序は崩壊、日常が悪夢に変わる。だ
が、“最悪”はまだ始まったばかりだ。

『ニューオーダー』レビュー

主人公は、富裕層家族の中で育った娘マリアン。幸せ絶頂の結婚式の日に、身内の手術費がないとお金を借りにきた昔の使用人に対しても、親身になって何とかしてあげたいと、親族や知り合いからお金を集めるために走り回る人格者でもある。

本作の世界観としては、貧困層の増加によって、政府や富裕層に対しての不満が爆発。使用人や労働者たち、そして同調する者たちが結託して、暴動に発展してしまっているというカオスなもの。

しかし今作が恐ろしい点は、現実に起きてもおかしくないということだ。

ある程度の誇張はされているものの、舞台となっているメキシコは、貧富の差が激しく、常に麻薬カルテルや人身売買、武装した強盗の襲撃など、危険が絶えず、穴を掘れば人骨が出てくるというような嘘のような本当の状況なだけに、フィクションとは言っていられない。

本作と同じような思想や不満をもった人々は、必ずいるのだ。

それを富裕層ではあるが、混じりっけのない人格者であるマリアンの視点で描かれるというのが、これまた皮肉に満ちている。

貧困層をバカにしたような、性格の悪い富裕層はいたぶられるというような、ホラーにおけるリベンジや教訓メタファーではなく、徹底的に人格者がいたぶられるのは複雑な気分にさせられるし、富裕層のもとに生まれたマリアンが自分の人生を恨むような、耐え難い体験の数々は、観ていてかなり辛くなってきてしまう。

『父の秘密』『母という名の女』といった濃厚な人間ドラマを撮り続けてきたミシェル・フランコが手掛けたスリラーという時点で、ストレートなものなはずがないとは思っていたが、ここまで後味が悪い作品だったとは……。

点数 83

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