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この映画語らせて!ズバッと評論!!『きさらぎ駅』全体に漂うチープ感をスパイスと捉えるとするならば……悪くはないかも

この映画語らせて!ズバッと評論!!『きさらぎ駅』全体に漂うチープ感をスパイスと捉えるとするならば……悪くはないかも

作品情報

大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、数ヵ月にわたりメールでやり取りした結果、春奈は遂に純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞いた。その内容は春奈には到底信じられるものではなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へたどり着くことができたヒントに気づく。純子の別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく。

『きさらぎ駅』レビュー

『真・鮫島事件』の惨劇が記憶に新しい永江二朗監督の最新作だが、前作の反省点は大きく活かされており、役者の演技は悪くはないし、物語としても割とまとまっているが、観る側である程度の忖度が必要となる映画であることは間違いない。

2004年に流行った……といっても、主にネット民の中でといった感じだが、都市伝説「きさらぎ駅」というものがある。これは簡単に言うと異世界に迷い込んでしまい、そこから抜け出すには、法則を理解し、攻略するしかない……。といういかにもネットで盛り上がりそうなものだ。

「きさらぎ駅」に迷い込んでしまった者の一人称視点で展開され、その人物が脱出に成功すると、新たに迷い込んだ別の人物の視点に切り替わり、それがループし続けるというもので、まさにゲームのような画作りである。

令和ということを忘れそうになるほどのチープなCGが、予算と技術の都合をひしひしと感じさせる一方で、もしかしたら……と思うこともあった。それは「きさらぎ駅」の中の時間は2004年で止まっていることで、あえて2004年前後のCGのチープ感を表現したのではないだろうか。ということ。たぶん違うだろうが…….しかし、そう考えると本作はたちまち味わい深いものとなるかもしれない。

90年代~2000年代にかけて、サウンドノベルシリーズから発展して、一人称のホラーゲームが出回り始めた。映画化もされた「サイレン」や「零」といったシリーズもこの頃に発売されたものだ。

一人称視点という点でもそうではあるが、主人公が誰を助け、誰を犠牲にして、どう行動するかの選択によって、展開が変化してくるというのは、まさにゲームそのものである。

映画館のスクリーンでレトロゲームをプレイしていると思うと、妙な懐かしさも感じてしまうし、チープなCGが絶妙なスパイスとして機能しているのだ。

チープさに気を取られてしまいがちではあるが、そんなチープさこそが、今作のスパイスだと、ある程度の忖度をすることによって、観ていられる作品となるということ

点数 72

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