ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『シン・ウルトラマン』当初のデザイン、裏設定を正規のものにしようとする樋口&庵野の作り出したマルチバース!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『シン・ウルトラマン』当初のデザイン、裏設定を正規のものにしようとする樋口&庵野の作り出したマルチバース!!
©2021「シン・ウルトラマン」製作委員会

作品情報

1986年、秋。黍名子中学で3年生の担任を持つ甘利田は、受験シーズンに突入するにも関わらず、給食の献立表のみを気にしていた。学年主任の宗方早苗はそんな甘利田に呆れつつ、彼女自身もある悩みを抱えていた。そんなある日、甘利田にとって受験以上に気になる事件が浮上する。給食メニューの改革が決定されたのだ。不穏な空気を察知した甘利田は、給食を守るために立ち上がる!果たして受験は?卒業は?進路は?そして、中学最後のうまそげ対決、勝者はどっちだ!?

『シン・ウルトラマン』レビュー

©2021「シン・ウルトラマン」製作委員会

「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる庵野秀明が『シン・ゴジラ』に続き、平成ガメラの特撮監督・樋口真嗣とのタッグを組んだ『シン・ウルトラマン』がついに公開された。

まず目ほ惹くのが、今となってはデザインの象徴のような、カラータイマーがないことだった。一般的にはおかしなデザインに感じるかもしれない。しかし、これを特撮マニアが見ると、見え方は違ってくる。

そもそもウルトラマンのデザインには、カラータイマーは付いていないのだ。なぜカラータイマーが付いたかというと、それは前作『ウルトラQ』がモノクロだったことからもわかる通り、『ウルトラマン』の放送当時は、モノクロからカラーに移り変わる過渡期であった。そのためモノクロで『ウルトラマン』を観る子どもも少なくなかったことから、視覚的にウルトラマンが弱っていることを表現するために、カラータイマーが付けられ、それが点滅すというギミックを付けたのだ。

また背中の背びれは、人が中に入るためのファスナーを隠すため、目の黒目はのぞき穴の役割を果たしていた。ウルトラマンの特徴的な部分は、当時の諸事情によって付けられたものだったのだ。

映像技術が進歩し、今作のウルトラマンはCGのため、人間が中に入る必要もない。そこで成田亨のデザインのままに映像化することが可能となったことから、『シン・ウルトラマン』は成田亨のデザインを尊重したものとなっており、他の宇宙人のデザインも、成田亨デザインっぽい角々しいものとなっている。

実現しなかったデザインを使用したという点で、庵野が従来の「ウルトラマン」シリーズに属する、ド直球なヒーロー映画を撮るはずもないことが伝わってくるが、意外にも『ウルトラマン』のストーリーラインには沿っている。

細かい設定や、特撮ファンしか知らない裏設定を正規のものにしようとする企みも感じられるが、なんだかんだ言って、『ウルトラマン』自体も大好きな庵野は、成田亨のデザイんにもリスペクトしつつ、『ウルトラマン』として結果的に作られた作品に対してもリスペクトを忘れていないのだ。

ガボラとネロンガが登場するという点でも、特撮ファンはざわついていただろう。

何故なら、この2体は同じバラゴンの着ぐるみを改造したもので、同種族の怪獣という裏設定もあるため、何等かの共通性が描かれる可能性があったのだ。そして結果的にその通りであった。さすがにバラゴンは東宝怪獣シリーズということもあって、間のパゴスから派生したものということになっていた。

これでわかるように、実現しなかったデザインや企画、裏設定をことごとく詰め込んだものであるし、追い打ちをかけるように、主題歌の『М八七』も、企画段階では、ウルトラマンの故郷がM78星雲ではなく、M87だったからだ。ゾフィーもゾーフィーになっている。

作中でも言及されているように、今作はマルチバースが大きく関わっていることから、直接的ではなくても感覚的だったり、別世界として『シン・ゴジラ』と繋がっていることは否定できないし、もしくは『ウルトラマン』のデザインが成田亨の絵のままであり、裏設定を全盛にしたら、どんなウルトラマンになるのだろう……というメタ視点から見た「もしも…」な物語としても機能しているといえるだろう。

もっと詳しい解説はクイック・ジャパン、サンゾーにて!!

点数 86

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事