作品情報
ハロウィンシーズンで賑わう東京渋谷。渋谷ヒカリエでとある結婚式が執り行われていた。そこには、ウェディングドレスに身を包んだ警視庁・佐藤刑事の花嫁姿が。コナン達招待客が見守る中、突然乱入してきた暴漢が襲い掛かり、守ろうとした高木刑事がケガを負ってしまう。高木は一命を取りとめ事態は収束したが、佐藤の瞳には、3年前の連続爆破事件で、想いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えていた。時を同じくして、その連続爆破事件の犯人が脱獄。果たしてこれは偶然なのか?
『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』レビュー
今までの漢字部分が無理やりな英語にされていたタイトルとは違い、今回はかなりストレートなタイトルになったことから、もう変な英語入れるのは諦めたのだろうか、それが醍醐味でもあったのだが……。確かに「ハロウィンのブライド」だと、語呂が悪い感じもする。
今作は、渋谷のハロウィンが題材になっていることもあるだけに、渋谷ヒカリエやスクランブル交差点など、実際に渋谷のロケーションが効果的に使われている。どうせなら渋谷が破壊されるシーンも観てみたかった。
架空の町米花町のモデルが高田馬場付近ということもあって、距離感もちゃんと反映されているのは流石。
前作『名探偵コナン 緋色の弾丸』の電車が突っ込むディザスター・パニック的な要素は薄れていて、派手さはないものの、久しぶりに明確に人が死ぬ描写がある。コンプライアンス的に死体がないほどに、焼失したり、吹っ飛ぶ感じにはなっている(死体を描かなければ、吹っ飛ぶのはありなのか?)
近年の女性ブームにあやかっての、キャラ売り映画になっていることや、映画のトレースのようなに作画シーンが気になるのは言うまでもないが、テレビシリーズに影響が出てしまう設定には触れられないという点から、付かず離れずな絶妙な距離感のもとにストーリー構成をしている脚本術に関しては、毎度のことながら、よくやっていると思う。
その点でいくと、高木・佐藤刑事コンビが、ついに結婚?そんな「相棒」の劇場版のように、テレビシリーズに影響を及ぼす展開を映画でやるのか?とも思ったが、そこは案の定といったところだった。
コナンを放送開始から観ている立場からすると、高木刑事がここまでフィーチャーされるのは嬉しくもある一方で、そこに手を付けないといけないぐらいネタが圧迫されていることへの不安もある。
そうは言っても今作、特に脚本がよく出来ていて、近年のコナン映画では、圧倒的にプロットが弱かった『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』の大倉崇裕が脚本ということで不安もあったが、今作を観て納得したのは、『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』に関しては、作品自体の趣旨が悪かったのだろうということ。大倉崇裕は、警察の内部事情を描くうえでは、抜群な才能を発揮する脚本家でもあることから、今作のように警察内部の動きが関わる構成は、本領発揮といったところだ。
ただでさえ多いキャラクターを、ごちゃごちゃさせるとまとまりが悪くなることもあって、あえて毛利蘭と小五郎のレギュラーメンバーの存在を早い段階でストーリーラインから排除したのは、非常にプラスに働いていて、まとまりも良く非常に観やすい。クライマックスぐらいは戻してあげてもよかった気はするが…….
ネタバレになってしまうから、明確な指摘ができないが、あえて言うなら、犯人はもう少し人間的にしてあげてよかった気はしている。今回の一件で感情が芽生えても良いシーンはあっただけに、最後まで冷酷なキャラクターで押し通したことで、どんな犯罪者に対しても「救い」を与える、悪意の浄化という点においては、(コナンがもともとそんな物語ではないのかもしれないが)ちょっと雑な感じがしてならない。
点数 85
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