作品情報
コアラの支配人バスターが経営するニュー・ムーン劇場は、今夜もチケットは完売。ブタのロジータとグンター、ゴリラのジョニー、ゾウのミーナも絶好調。しかしバスターには、エンターテイメントの本場でショーを開いて成功させたいという夢があった。その夢を叶えるきっかけが転がり込む。なんとエンターテイメントの聖地レッドショア・シティにあるクリスタル・タワー劇場のスカウトウーマン、スーキーがショーを観に来たのだ。満足いくステージを見せることができたと思っていたバスターだが、スーキーは「三流のステージ」と言い放ち、途中で帰ってしまう。それでも諦め切れないバスターは、仲間を引き連れてクリスタル・タワー劇場のオーディシヨンに強行突破で潜り込むのだが……。
『SING/シング:ネクストステージ』レビュー
地方舞台組が都会へ、インディーズからメジャーへといった、芸術系サクセス・ストーリーにおいての続編展開では「こうなる」という王道的物語であり、愛、友情、夢、あきらめない心……といった、子どもに教えたいことがいっぱいつまったアニメ映画である。ファミリーで観るには間違いない作品だといえるだろう。
しかし、アニメ映画業界は今やレッドオーシャン状態。需要はあるが、ネタは使い倒されてしまっていて、子どもも楽しめる王道を極めると、どうしてもありきたりな物語になってしまい、個性を失ってしまう。今作も例外ではなく、物語としては、よくある話だ。
ところが、今作が別のアニメ映画とは別格なのは、前作『SING/シング』やドリームワークスの『トロールズ』も同様に、擬人化されたキャラクターの姿を通してではあるが、既存の楽曲を有名アーティストや俳優たちがカバーする特別ステージを観ているような感覚になる点である。
スカーレット・ヨハンソン、タロン・エガートン、トリー・ケリー、リース・ウィザースプーンといった歌手経験やミュージカル経験のある俳優が、前作に続き参加し、プリンスやコールドプレイ、ビリー・アイリッシュ、BTSなど、様々な世代のヒットソングを歌い上げる。
さらに今回は、ホールジーとU2のボノ、ファレル・ウィリアムスといった、アーティストを新キャラクターとして登場されていることもあって、各段にレベルが上がっているのと同時に、ネクストステージでショービズ界のプロの才能に触れるという展開とメタ的にリンクしているのだ。
ホールジーがザ・ストラッツやアリシア・キーズの楽曲をカバーするというだけで価値のあるというもの。
また前作に続き、監督を務めるのは、ファトボーイ・スリムやレディオヘッド、ブラーなどのミュージック・ビデオを手掛けてきたガース・ジェニングスである。対象物が動物であっても、アーティストの見せ方を心得ていて、それがステージパフォーマンスにしっかりと活きているのも、今作の質を向上させている理由のひとつだ。
その楽しさを十分に満喫するには、英語音声で観ることが不可欠。日本語吹替えが悪いという意味ではないが、今作で使用されている楽曲は、ディズニー映画のように、そもそも多言語で吹き替えられることを前提として作られた、オリジナル楽曲ではないため、英語で発音することが大前提となっている曲ばかりだ。
B’zの稲葉浩志と長澤まさみのデュエットも、それはそれで異例な豪華さではあるが、英語の曲を無理に吹替えてしまうと、バランスが崩れてしまい、本来の音楽性を失ってしまう危険性すらある。
点数 89(字幕)、70(吹替)
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