作品情報
2018年7月、昔ながらの町家が残る京都西陣。路地奥にあった映画監督・原將人の自宅が不慮の火事で全焼した。幸い家族5人は無事だったものの、すべての家財道具と保管していた映画フィルムや機材が焼失してしまう。原は新作のデータを救いに火の中へ戻り、やけどを負って入院。夫を安心させようと、妻のまおりはとっさに家族の様子をスマートフォンで撮影した。今夜寝る場所は?着る服や靴は?火災保険は?明日からの仕事や学校は?呆然とした夜が明けて、嵐のような日々がはじまったーー
『焼け跡クロニクル』レビュー
まず自分の家が火事になったら動画を撮るだろうか…… という点から、根っからの映画人であることが伝わってくる。その動画を撮っていたのは、奥さんである原まおり。しっかりと原將人イズム伝わているということだ。
今までにも、『双子暦記・私小説』『初国知所之天皇』など、自分自身のホームビデオとドキュメンタリー映画という、中間的な作品を撮り続けてきた原將人が今作に行きついたというのは、皮肉というべきか、紛れもなく原將人と、生活を共にしてきた原まおりにしか撮れない作品だ。
原監督作品は好き嫌いが分かれるし、比較的ドキュメンタリー映画を多く観るような人であっても、全く観ないジャンルのドキュメンタリー映画ではあるし、個人的にも、あまり好きではない。
しかし、今作が映し出しているのは、作り物ではなく、本当に自分の家が火事になってしまったら、どうやってその先生きていったらいいのか……家族はどうなってしまうのか……といった、そんな誰もが一度思ったことがあったり、実際に体験してしまった人の疑問を浮き彫りにした唯一の作品といえるものだ。
新作のデータが入ったパソコンとハードディスクだけは絶対に守りたいと、火の中に飛び込んだ原監督は、全身に火傷を負って、その生々しい姿が映し出されるが、幸いにも回復が見込めるもの。
家族も隣近所も誰も死者が出なかったのは、不幸中の幸いというもので、その中でリアルそのものな家族の再生を観ることができる。
原監督作品が苦手という人も、今作は原監督らしさは全開ではあるが、ちょっと別物として観るのもいいだろう。
自分の家が火事や災害で突然なくなってしまったとしたら、どうしたら良いのだろうか……。そうならないことに越したことはないが、今作を観ておくと、いざという時に少し気が楽になれるかもしれない。
点数 80
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