作品情報
韓国で⽣まれ、3歳の時に養⼦としてアメリカに連れてこられたアントニオは、シングルマザーのキャシーと結婚し、娘のジェシーと3⼈で貧しいながらも幸せに暮らしていた。ある時、些細なことで警官とトラブルを起こし逮捕されたアントニオは、30年以上前の書類の不備で移⺠局へと連⾏され、強制送還されて⼆度と戻れない危機に瀕してしまう。キャシーは裁判を起こして異議を申し⽴てようとするが、最低でも費⽤が5千ドルかかることがわかり途⽅に暮れる。家族と決して離れたくないアントニオはある決⼼をするー。
『ブルー・バイユー』レビュー
難民や不法移民にも歴史があり、その2世、3世ともなると、生まれたころから移住地で育っていることもあって、アメリカならアメリカ人、カナダならカナダ人という自覚の強く、他者から移民だと言われたところで実感があまりない。特に戦争孤児などであれば、里親を転々としている間に、自分のルーツさえもわからなくなってしまう。実はルーツは不法移民ということもありえるのだ。
その中でも、不自由ながらも、家族をつくり、幸せな生活をしている者もいるが、何か問題が発生してしまうと、不法移民扱いされてしまう。周りからは、よそ者扱いされ、麻薬カルテルや人身売買など、犯罪がらみの不法移民と同等に扱われしまう。
警察沙汰になった場合、行政の世話になった場合、表に出したくない情報があぶり出され、そこにある歴史や理由は考慮されない。 住まいがあって、家族もいるのに、強制的に国民ではないとされて、行ったこともない母国に強制送還されてしまうこともあるのだ。
ドナルド・トランプの行った政策によって、そういった意味では、家族から大切な人を引き離す結果になった。しかし、その一方で、実際に犯罪を抑止することもできたことを考えると、これはアメリカや他の国に限ったことではないが、政策の穴というのは、戦争を繰り返してきた国、もともと移民が集まってできた様な国では、簡単に白黒付けられないから難しい。
今作は実話がベースとなっているが、こういった経験をしている人達は、数多く存在しており、決して異例なことではない。
実話ベースといっても、非日常的事実だからこそ映画化されることが多いが、今作は日常的に起きすぎているからこそ、映画化する必要があるということなのだ。
監督・脚本・主演を務めたジャスティン・チョンは、生まれはアメリカで、アメリカで活躍している俳優だが、ルーツは韓国にあることもあって、どこかで道が違っていたら、決して他人事ではなかったかもしれなかった。アメリカ育ちのアメリカ人と思っていても、外見はアジア人。周りはそうは思っていなかったかもしれないが、どうしても感じてしまう疎外感というものがあったのだろう……それが映画の中に、にじみ出ている。
点数 80
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