作品情報
コメディが得意なアメリカ人の映像ディレクター・スティーブは、3.11のドキュメンタリーを作るために来日するが、被災地を訪れた際に見かけた演劇の舞台をきっかけに、コメディ映画を作ろうと考える。取材を重ねる中で被災状況を目の当たりにし、かつ週刊誌に誹謗中傷の記事が出るなど、暗雲が立ち込めてしまう。しかし、彼には映画を撮らないといけない理由があったのだ。一方、3.11で息子を亡くし、ロサンゼルスに移り住んだ日本人シンガーの麗子。歌のせいで息子を失ったという罪悪感に苛まれ、再びシンガーとして活動することや日本に残してきた夫と向き合えない年月を過ごしていた。ある時、彼女は夫からの手紙の中にあるものを見つけるが…。
『永遠の1分。』レビュー
『カメラを止めるな』のコンビの新作ということで期待できるほどのブランド力なんて、そもそもありもしないし、一発屋監督・上田慎一郎が脚本を担当しているというだけで、負の要素にしか感じられない。
3.11を題材としたコメディを作りたいと外国人映画スタッフが奮闘するというベースの物語は良いとしても、散々、不謹慎と言われているだけに、風刺やブラックユーモア全開のコメディセントラルのような作品を作ろうとしているのかと思いきや、基本は復興しようとがんばっている人々のハートフルなドラマがメインであって、コメディでも何でもない。
不謹慎というのは、『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』のように、原発をネタにしているものに使う言葉であって、明らかに不謹慎をはき違えている。
外国人が3.11の映画を撮るというだけならよかったのだが、コメディ映画なんて言ってしまっているだけに、無駄にハードルを上げてしまっているから余計に話がややこしい。
素人の考えたような、鈍い笑いのセンスが非常に痛々しく、上田慎一郎の笑いに対するハードルがいかに低いかがわかってしまう。だから『スペシャルアクターズ』や『ポプラン』のような作品を、おもしろいと思って堂々と作れるのだ。
昭和喜劇のような、古典的なギャグが、もはや作品にとってノイズでしかなく、どういう感覚を持っていれば、これがおもしろいと錯覚できるのかが、謎で仕方ない。
今作の肝となるのは、不謹慎でも、暗い話題ばかりを扱うような作品よりは、コメディでみんなが笑って幸せになれば、いいのではないだろうか…….という、何でもコンプライアンスに振り回されて描けない現代の風潮にメスを入れている部分であると思う。
しかし、完成したものが、コメディ映画ではないだけに、作品として成り立っていないのだ。この程度のコミカルな要素であれば、他の3.11を扱った作品にだって、普通に入っている。
これを本当にインディーズの外国人監督が撮っているのであれば、まだ可愛げがあるというものだが、日本人が
唯一、良かった点を挙げるとすれば、歌手役のAwichの歌声ぐらいなものだ。
点数 58
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