作品情報
「世界を変えたい」─天才的な頭脳に恵まれたロスは、自由な世界を求め、表では絶対に買えない違法物を匿名で売買できる闇サイトを立ち上げた。〈シルクロード〉と名付けたサイトは、瞬く間に熱狂的なブームを巻き起こし、栄華を極める。ハデな動きですぐに警察にマークされるが、ロスは絶対に身元がバレない強固なシステムを創り上げていた。そんなロスを追う捜査官の中に、一人のはぐ れ者がいた。リック・ボーデン、問題行動を起こし、麻薬捜査課からサイバー犯罪課へ左遷された男だ。アナログ全開で足手まといのリックだったが、独自の捜査でロスとの接触に成功する。 リックが考えた驚愕の捜査方法とは?そして二人を待つ運命とは─?
『シルクロード.com 史上最大の闇サイト』レビュー
実在していたドラッグ売買が個人で簡単にできてしまう、闇のショッピングサイト「シルクロード」を2011年に立ち上げ、2013年に逮捕されたロス・ウルブリヒトをモデルとしたフィクション。
ロスの視点と並行して、アルコール依存で施設から出てきたばかりの刑事が、サイバー犯罪を扱う部署に異動され、疎外感を感じながらも、自ら「シルクロード」を調査し始め、証拠をつかんでいくが、上司からは相手にされず、おとり捜査のはずだったのが、自分も関与していってしまう……というリックの視点も描かれていく。まさにミイラ取りがミイラになったと言うような内容ではある。
今作が非常に残念なのは、終始地味なところだ。
製作費の問題があるのかもしれないが、ロスは巨額の富を得たというのに、生活がかなり地味で、起業サクセス的な側面がほとんど感じられない。扱っているのは闇サイトで、結果的に詐欺で逮捕されてしまうにしても、そこは映画的な演出があっても良かったのではないだろうか。
電子取引で全てが完結してしまうため、目に見えて現金が動くことがない分、ロスの生活の変化によって、それを表現するしかなくなってくるわけだが、それを描けるチャンスがあった前半でしなかったこともあって、後半からは、ずっと警察に捕まるのではないか……という、ロスの神経が過敏になっていく様子が描かれており、その際の緊張感もよく伝わってくる。
しかし後半は、証拠を握られたリックとのチャットの送り合いばかりが展開されて、パソコンや携帯とにらめっこしているだけ。学生とおじさんのチャットのやり取りシーンが長時間続くだけで、さらに地味になってしまう。
プロット自体は魅力的なものだが、そのまま映画化すると地味になりそうだし、サイバー犯罪が進化し続ける現代においては、はっきり言って時代遅れな題材。 2010年代前半はPaypalやネットバンク、ビットコインのセキュリティが、ユルユルだったからこそ、できたことであって、現代では難しい部分はある。
ロスはあくまでサイト運営者で手数料を得ているのであって、匿名とはいっても個人取引きばかりだから、サイトユーザーの足はすぐに付くという点があえて描かれていない。当時の警察がそこまでサイバー犯罪に無知だったかというと、2010年代なら、そんなことはないはずだ。
ドラッグといっても、種類や州によっては合法的なのだったりして、その選別が難しく、実際の事件の扱い自体が、常に議論されているものを、あえて映像化するのであれば、どうセンセーショナルな演出で、映画的に描くかという壁に直面するが、今作はその壁を越えることができなかったというべきだろうか……
点数 74
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