作品情報
貧しさゆえ、犯罪組織からの下請け仕事である死体処理で生計を立てる口のきけない青年テインと片足を引きずる相棒のチャンボクは、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを、1日だけ預かることになる。トラブルが重なり、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まるが、チョヒの親から身代金が支払われる気配はなく…出会うはずのなかった者たちの巡り合わせが、韓国社会で生きる声なき人間たちの孤独を浮き彫りにする。
『声もなく』レビュー
『ただ悪より救いたまえ』でも扱われていたが、韓国の裏社会というのは、臓器目的の人身売買がトレンドなのだろうか……今作も明確には描かれいないが、子どもたちがどこかに連れていかれて売られる様子があった。がしかし、他の子どもたちがどうなってしまうかといった根本的な部分は、ほとんど描かれていない。
今作は、誘拐犯と被害者の間に、友情や絆が芽生える、いわゆるストックホルム症候群のようなものを描いていて、誘拐犯(正確には下請け)と少女の物語が描かれる。
クリント・イーストウッドの『クライ・マッチョ』も誘拐をきっかけに物語が展開されていくし、今更珍しい設定ではない。
日常を共に過ごすことで、奇妙な関係性が築かれていき、そこには、他者からの俯瞰的で常識に囚われたモラルなど存在していない。
主人公テインと少女チョヒの関係は、他者からは理解できないし、犯罪であることに違いはないだけに、到底共感できるものとは程遠いが、そこには、確実に「絆」は存在しているのだ。
目的は特になく、その日暮らしのテインが、チョヒを守るという目的を見つけるが、チョヒの幸せを考え、親の元に返すことは、同時に唯一見つけた自分の目的を失ってしまうという、複雑な状況に立たされて、どう決断するかが、緊張感なく描かれる。
この緊張感のなさが、今作の良いところともいえるところで、のどかな風景の中で展開される犯罪劇が終始シュールな雰囲気に包まれているのだ。
ブラックユーモアの溢れている作品ともいえるが、コメディとしては、あまりおもしろいとは感じられなかった。
点数 75
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