作品情報
妻が列車事故で亡くなったという報せを受け、軍人のマークスはアフガニスタンでの任務を離れ娘の元へ帰国する。悲しみに暮れる娘を前に無力感にさいなまれるマークスだったが、彼の元を二人の男が訪ねてくる。その中の一人、妻と同じ列車に乗っていたという数学者のオットーは、事故は“ライダーズ・オブ・ジャスティス”という犯罪組織が、殺人事件の重要な証人を暗殺するために周到に計画された事件だとマークスに告げる。怒りに打ち震えるマークスは妻の無念を晴らすため、オットーらの協力を得て復讐に身を投じてゆくが事態は思わぬ方向に…。
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』レビュー
なんだか最近、マッツ・ミケルセンが、リーアム・ニーソンのような立ち位置の俳優になりかけている気がしてならない今日この頃。
今作は、アクション映画や復讐劇のようなイメージが強いかもしれないが、ゴリゴリの肉体派軍人と、普段なら絶対に交流をもたないナードたち、そしてターゲットに捕まっていた人質など、ミスマッチなジャンルのキャラクターの組み合わせによる、独特の空気と距離感を味わう作品といえるだろう。
ミスマッチなナードの組み合わせは、『X-ファイル』のローンガンメンや『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』『バフィー 〜恋する十字架〜』などでも同じで、足手まといのようでも、いないと困る。
それぞれにスキルがあるのと同時に、様々な問題も抱えていて、目的に達する過程で、互いに依存的な関係性に発展していく。この特殊な関係性から生み出される醍醐味はしっかりと抑えられている。
何故か冒頭に、ストーリーに全く関係ない老人が孫に自転車を買うシーンがある。しかし、別の色の自転車欲しいと、その場では自転車を買わない。その自転車を販売している業者は、盗難自転車を売っていて、その子が欲しいといった色の自転車が盗まれる。ここで様々な人の運命が変化する。
自転車を盗まれた人の運命も、変わってしまうだろうし、極端なことを言うと、その自転車を手にした少女が、その喜びから自転車レースの選手になねかもしれない……と考えていくと、様々な出来事には理由があって、その理由を理解したとき人間は成長できる。それが神の与えた試練、運命のサイクルなどといった、かなり宗教的なテーマが含まれている。
電車が爆発したことは悲劇ではあるが、それによってかけがえのない仲間を手に入れた。そうなることこそが運命という結論に導いていくことが全体的な趣旨になっているため、アクション主体ではないのだ。
何でも力づくでねじ伏せようとしていたマークスも、娘の声に耳を傾けるようになっていき、より人間的に豊かな感情に目覚めていく。これも神が与えた試練に耐えたからこそ、得られたものである……
慰めのようでもあり、悪く言うとこじつけでもあるが、監督が描きたいのは、そういったことなのだ。
ハードボイルド・アクションやサスペンス、コメディといった、様々なジャンルがミックスされていることで、カモフラージュされているが、これは間違いなく宗教映画。
これは推測ではなく、決定付ける理由もある。それは、今作の監督アナス・トマス・イェンセンという人物は、『アダムズ・アップル』『ラン&チキン』といった今までの作品の中でも、「物事には理由がある」というテーマを一貫して描き続けていることが物語っているように、宗教的要素が入るのは、彼の作家性だからだ。
点数 78
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