作品情報
とおいむかし、シチリアの古代の山奥でクマの王レオンスと息子トニオは平和に暮らしていた。ところがトニオが猟師に連れ去られたために、レオンスは息子を探し、仲間とともに雪山を下りて人間の街へ……。山々に囲まれたクマの里の牧歌的な風景は、サスペンスが加速するにつれ、色鮮やかに輝き出す。雪山を滑り降りるクマ軍団の躍動感!魔法使い、人喰いトロル、化け猫、古城の幽霊……。レオンスたちが立ち向かう冒険に胸踊らされ、溢れる詩情に酔わされる82分!
『シチリアを征服したクマ王国の物語』レビュー
ひとり息子トニオを人間に誘拐されたクマの王国の王レオンスが主人公。
人間たちはクマを恐怖の存在と思い、攻撃をしかけてくる。クマたちはそれでも平和的に解決しようとこころみるが、人間たちは聞く耳をもたず、すぐに武力で解決しようとする。
人間だけではなく、食人トロルやゴーストたちの妨害を乗り越えて、トニオをサーカスで見つけ、人間の王を倒したことで、レオンスは人間とクマ共通の王として君臨し、クマと人間は共存して幸せに暮らしました…….というのが前半はおとぎ話テイスト全開の物語。
しかし、後半からは少しトーンが変化する。クマは自由や権力得て、人間を支配下においたクマの心情がどう変化していくのかを描いているのだ。
息子のトニオも人間の生活に慣れてしまって、魚を捕るともできないどころか、スモークサーモンの方が良いと答え、そんなことは古臭くて、新しいクマは酒やギャンブルもすると言い張る始末。
ある日、魔術師の杖が盗まれ、金庫のお金も盗まれた。友人だったサルペルトは、独裁者のようになっていく。
性格や価値観、概念といった、本質的なものは誰もが、それぞれ少しずつ違うものの、それを良くも悪くも後押しするのは、おかれている環境であるということなのだ。
今作で描いているのはもクマになぞってはいるものの、非常に教訓的なものであって、クマや人間は、本質的には変わらないが、与えられた権力や、それを取り巻く環境によって変化してしまうということを描いているのだ。
そういった黒い部分を徹底的に描くというよりは、あくまで子ども向けということもあって、なんとなく描いているのも丁度良いといえるだろう。
点数 72
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