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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ロスト・ドーター』日常や過去の呪縛からは人は開放されることなどない!それは異国の地でも同じこと!!

作品情報

ひとり海辺のバカンスに訪れたレダ (オリヴィア・コールマン) は、ビーチで若い母娘から目が離せなくなる。彼女たちの目につく関係 (そして騒々しくて横柄な大家族) に動揺したレダは、自分が未熟な母親として恐怖と混乱でピリピリしていたころの記憶に押しつぶされそうになる。そして、衝動的に起こした行為が引き金となり、レダは心の中の奇妙で不気味な世界へ迷い込んでしまいます。若いころに母親として尋常ではない選択をしたこと、そしてその選択がもたらした結果に対峙することを余儀なくされる。マギー・ギレンホールが初監督として、エレナ・フェッランテの小説の映像化にチャレンジした『ロスト・ドーター』。出演は、ダコタ・ジョンソンジェシー・バックリーエド・ハリスピーター・サースガードポール・メスカルダグマーラ・ドミンチックほか。

『ロスト・ドーター』レビュー

マギー・ギレンホールの初監督作品ということで話題となり、ゴールデングローブ賞などの映画賞にもノミネートされている作品ではあるが、主人公レダの年齢や、娘が2人いること、仕事で家を空けがちといった点において、マギーの私生活に近い設定が多いのは、自身をいくらか投影しているからだ。

オリヴィア・コールマンをキャスティングしたのも、どことなく自分に似ていたからではないだろうか。

日常を忘れられるものとしてバカンスに出る人も珍しくはない。日頃のストレスや仕事、対人関係なども全て忘れて、誰も自分を知らない異国で過ごしたいという人も多いだろう。今作の主人公レダも例外ではない。

しかし、自分を知らない異国の地で、忘れたいはずの日常が浮き彫りにされ、そこで出会った者たちと、新たな関係が築かれることで、忘れたい日常や過去思い出がリンクしてしまう。

普通の日々や時間の流れを感じることこそが、レダにとっては苦痛だった。親切にしてくれて好意をもってくれる管理人、おせっかいなビーチハウスの従業員、自分をしたってくれる女性……他人と関わらずに静かに過ごしたいのに、ことごとく邪魔が入ってしまう。

静かに過ごせると思ったビーチは、地元民のたまり場ということもあって、家族連れが日々集まり騒がしい。静かな場所を求めて、ふと映画館に入れば、そこにも騒がしい若者たちがいる。

レダにとって静かに過ごせる場所などなく、何かがきっかけで思い出してしまう。

変な虫が部屋に突然入ってきたり、大きな松の木から突然落ちてくるマツボックリ。人だけではなく、自然までもがレダのバカンスを邪魔する。

バカンスなど気休めに過ぎず、忘れたいと思っているはずが、どこがで自分自身が日常を求めているし、人生という呪縛からは逃れることができない。自分の日常を受け入れて、そこに安息を導きだすしかないことを痛感する。

さらに観ている私たちも、日常を忘れたくて映画を観ているはずが、レダを通して、自分の日常を思い出してしまう二重構造になっているのだ。

点数 90

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