作品情報
夫の突然の自殺の後、ヴェラは家がギャンブルの借金の抵当になっていたことを知らされる。男性優位の環境に抵抗する女性を力強く描いたコソボの女性監督のデビュー作。
『ヴェラは海の夢を見る』レビュー
長い間、不動産会社に売りに出していた田舎の家に買い手がついた。そのお金で不安定な役者の仕事をしている娘家族にマンションを買い、その残りで自分たち夫婦も旅行にでも行って、生活に潤いをもたせようと心浮かれるヴェラ。
しかし、夫はそれを知ってショックを受けており、その後死んでしまった。
ヴェラの夫は、コソボでそれなりに名が知られている存在ではあるが、同時にギャンブル癖もよく知られていた男。ヴェラの知らないところで、勝手に弟に家を譲ることを約束してしまっていた……という、よくある相続トラブルを扱った作品でもある。
ところが今作は、そこにサスペンス要素を加えたもので、その家を巡って、夫の弟とその周辺を巻き込んで、脅迫のように日々繰り返される無言電話、常に感じる何者かの目線、ついには命に危険がおよぶほどの悪質な嫌がらせまでも受ける。
一方、そんな中でも電気も止まってしまうほど、ギリギリな生活を続けている娘と孫。せっかく家を売ったお金で救ってあげられると思っていたというのに、自分の手の中から零れ落ちそうになっている。母親として娘を助けたいという親心と常に感じる恐怖との間に立たされるヴェラの心情を淡々と描いている。
その背景には、コソボにおける女性の権利や財産を所有することへの男性目線からの偏見という側面も隠されているのだが、国が違っていても、人間が欲によって人間性が変化してしまうという点では似たものを感じる。
だからこそ世界共通相続トラブル映画として観ても、十分に楽しめるサスペンス作品になっていることからも、万人受けする作品といえるかもしれない。
点数 80
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