作品情報
『ピアノ・レッスン』のアカデミー賞受賞監督ジェーン・カンピオンが脚本と監督を務める『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、”心奪われる”、”衝撃的”、”傑作”と称される大作。出演は、ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、一部の劇場で11月公開、Netflixで12月1日 (水) より配信スタート
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』レビュー
男らしくなければ、生き残ることができない時代。フィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)大牧場を経営し、大勢の男たちを雇っていた。
しかし、フィルにはある秘密がある。それは同性愛者ということ。その感情は当時としては、感じてはいけないもの、精神疾患のように扱われていた。
打ち明けることなど到底できない反動で、周りに悪態をつき、必死に自分を隠そうとする一方で、弟のジョージ( ジェシー・プレモンス )に対しても兄弟以上の感情があるように思える
ところがジョージが、未亡人のローズと勝手に結婚したことで、自分たちの財産を狙っているのではないかという疑念と共に、弟がとられてしまったという感情にも襲われる。さらにローズ(キルスティン・ダンスト)とその息子ピーター(コディ・スミット=マクフィー)も農場に引っ越してきたことで、フィルのイラ立ちはさらに増していく。
小ぎれいで中性的なピーターが気になるのと、ローズへの嫌がらせもあって、ピーターと行動を共にするようになるフィル。
ピーターとの交流によって、奇妙な友情から、いつしか愛に変化していくが、ピーターはその感情とは逆行するようなことを考えている。
もしくはピーターも同じような感情を一時的にでも感じていたのかもしれないが、そこは大好きな母親への想いが勝っていたといえるだろう。
ピーターの計画がわかる頃には、静かで恐ろしい結末をむかえることになる……
ベネディクト・カンバーバッチは、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でも同性愛者ということを隠して生きることへの苦悩を体現していたが、今回はまた違ったかたちで体現しているといえるだろう。
しかし、今回はそれ以上に、 コディ・スミット=マクフィーが焦点が定まらない奇妙な表情の演技をすることで、何を考えているのかわからない部分も多く、推測に留まってしまうのが、今作のミステリー要素を際立たせている。
本編の中で、たびたび名前が挙がる先代の牧場主ブロンコ・ヘンリーによって同性愛に目覚めたこともわかってくるが、それがどういった状況であったのか、同意のものとのことであったのかは不明。
フィルの気持ちが高ぶったときピーターにキスをしそうになるが、それを踏みとどまったのは、ピーターの今後の生きづらさを考えたのか、もしくは本当はこうなりたくなかったという感情があったからなのかもしれない。
全編を通して、なかなか考え深い作品といえるだろう。
点数 83
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