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この映画語らせて!ズバッと評論!!(先取り版)『ドリームプラン』娘の才能を信じ、娘も父を信じることによって達成できる”夢のプラン”とは?!!

作品情報

過去に2度アカデミー賞®にノミネート、人気、実力共にハリウッドのトップを極めたウィル・スミスの最新作『ドリームプラン』。彼が映画化を熱望したのは、世界最強のテニスプレイヤー、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育て上げた実父リチャードの「計画書=ドリームプラン」にまつわる〈驚きの実話〉。リチャードは姉妹が生まれる前にTVで優勝したテニスプレーヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿を見て、「娘を最高のテニスプレイヤーにしよう!」と決意。テニスの教育法を独学で研究し、「世界チャンピオンにする78ページの計画書」を作成。誰もが驚く常識破りの“ドリームプラン”を実行し続けた。お金もコネもない劣悪な環境下で、途方もない苦難、周りからの批判を受けながらも、そのプランでいかにして2人の娘が世界の頂点へ上りつめるのか―― ⁉ どんなに無謀だと言われても揺るがぬ信念を持ち、娘たちの可能性に人生のすべてを捧げるリチャード。不可能を可能にしていくその姿に心を揺さぶられる、一生忘れられない感動作。2022年の第94回アカデミー賞®最有力として注目されている。

先取り版とは?

私、映画評論家バフィーがマスコミ試写で、いち早く観て評論する先取り版です。通常回では、公開日もしくは前後に更新していますが、毎週10本以上の新作を観ていて、量が多く大渋滞状態ということもあって、先取りもしていきます。

ダメな作品はダメと言いますが、基本的にネタバレを垂れ流して、映画自体を観なくてもいいような評論はしません。

『ドリームプラン』レビュー

姉妹をプロテニス選手に育てようというきっかけは、不純な動機によるものかもしれないし、親のエゴも感じられるのだが、スポーツ選手の親なんてそんなものだと、ある程度大目に見るしかない……

ということもあって、今作では、子どもの自由が親に縛られないで生活することこそが正しい教育だと考えている人々は悪者扱いされてしまう。その証拠に家族の向かいの住人が子どもに過酷な日常をおくらせいていると警察に通報するシーンがあるが、逆に罵倒されてしまう。

親によって、日常が刷り込まれることは、ある種の洗脳ともいえるだけに、その中で育った子どもたちは、それが定義、正義、常識だと信じていて、葛藤が生まれることはあっても、その範囲内での葛藤に留まってしまうという議論も、今作においては論外。

教育や子どもの人権という視点から観てしまうと、疑問も多くなってしまうだけに、そこは除外して観るしかないのだ。

今作で描かれるのは、揺るぎなく頑固な父親の姿である。

人生プランを掲げている大人が失敗する映画は山ほどあるが、今作は何が何でも自分のプランを通そうとする父親の姿を描く。

プロのコーチからも学び、それと並行して、今までの試合の映像をひたすら研究し、独自のスタイルで娘たちを戦わせようとする。

しかし、それが間違っていたら?というような雑念などリチャードには全くなくて、その点は自分の考えが正しいと信じることができる頑固親父だ。

みるみると上達していく姉妹、白人富裕層のスポーツだと思われていた概念に風穴を開けていく様子は、まさに王道のスポコン映画といったもので、手に汗握るシーンも多く、その点は爽快感があって、娯楽要素や感動できる感情移入どころもしっかりと詰め込まれている。

若くして成功した者の悲惨な末路が、たびたびゴシップニュースとして流れる中で、子どもは子どもらしくあるべき、早い成功は身を亡ぼすという考えをもっているリチャードだが、この考えの背景には、黒人が国を背負うことへの代償も含まれているのだ。

それはリチャード自身が黒人差別を強く受けてきた世代であって、白人と肩を並べることへの危険性というのを熟知しているからこそ、自分の娘たちには未熟なままで戦場に出てほしくないと考えでいたから。

つまり黒人がほとんどいない、女子プロテニス界の中で、成功を収めることは、同時に「象徴」となることは間違いなく、娘たちが自分に責任が持てると確信できた日に、ゴーサインを出すタイミングを見計らっている様子、そしてビーナスの覚悟は『ファルコン&ウィンターソルジャー』におけるキャプテン・アメリカの盾を黒人であるサムが受け継ぐ心境とも似ている。

今作でメインに描かれるのは、セリーナ・ウィリアムズるの姉のビーナスだが、影からビーナスの姿を見せることで、ライバル心を闘志に変換させることか必要な過程だと考えていたリチャードのプランは、かなり考え込まれたものだと感心するばかりである。

それもこれも、娘たちの才能に絶対的信頼があってこそ。プラン達成の鍵は、リチャードがどこまで娘たちを信じることができるかということでもあったのだ。

ウィリアムズ一家が互いに信じ、尊重し合う時、「プラン」という概念にリンクする。

点数 85

2022年2月23日(祝・金)全国公開!!

監督:レイナルド・マーカス・グリーン 脚本:ザック・ベイリン 撮影:ロバート・エルスウィット(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)

出演:ウィル・スミスアーンジャニュー・エリスサナイヤ・シドニーデミ・シングルトントニー・ゴールドウィンジョン・バーンサル

2021年 アメリカ映画/2022年 日本公開作品/原題:KING RICHARD/上映時間:144分/スコープサイズ/2D/5.1chリニアPCM+ドルビーサラウンド7.1(一部劇場にて)

字幕:松浦美奈 字幕監修:伊達公子/映倫区分:G/配給:ワーナー・ブラザース映画 © 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

公式HP : https://wwws.warnerbros.co.jp/dreamplan/

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