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残された者の悲しみと再生を描き続ける吉田玲子の脚本力!福原 遥、山田裕貴などの豪華声優陣も注目の『フラ・フラダンス』

残された者の悲しみと再生を描き続ける吉田玲子の脚本力!福原 遥、山田裕貴などの豪華声優陣も注目の『フラ・フラダンス』

 第34回東京国際映画祭でジャパニーズ・アニメーション部門して先行上映されたアニメ映画『フラ・フラダンス』が2021年12月3日から一般公開される!

フジテレビが東日本大震災発生から10年となる2021年に、アニプレックス・イオンエンターテインメントと共同で岩手県、宮城県、福島県を舞台とするアニメ「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」のひとつとして制作された作品でもあるのだ。

先行して宮城県を舞台とした『バクテン!!』が2021年4月からテレビシリーズとて放送され、岩手県を舞台とした『岬のマヨイガ』が2021年8月公開された。そして今作『フラ・フラダンス』は福島県が舞台となっている。

 東日本大震災というデリケートな題材を扱っていながらも、未来への希望を提示する今作の魅力を紹介しよう!!

■東日本大震災後に変化した「復興」の意味

今作の舞台となるのは、福島県いわき市に実際にある「スパゾートハワイアンズ」である。このレジャー施設は、日本アカデミー賞を受賞した『フラガール』の舞台となったことでも有名な施設だ。

『フラガール』で描かれていたのは、昭和40年代を舞台に、石炭から石油に変わっていくエネルギー革命が押し寄せ、閉山が相次ぎ失業が多発したことで、地域復興の一貫として常磐ハワイアンセンター(現在はスパリゾートハワイアンズ)をどう活性化させていくことに奮闘する人々の姿。

 同じ場所と施設を舞台としていて、さらに今作で描かれているのも「復興」ではあるが、その意味は全く異なっている。

 震災を経験した福島県の住民が10年という節目を迎えた「現在」が描かれる。10年が経ち、徐々に日常を取り戻し、当時の10歳前後だった幼い子どもたちは社会に旅立っていく。

しかし、精神的にも物的にも震災の傷跡というのは、今も残り続けている中で、スパリゾートハワイアンズが再び復興の象徴となることで福島県の現在、そして未来への希望を提示してみせたのだ。

■吉田玲子の圧倒的脚本力が全面に活きた物語

『ドラゴンボールZ』や『デジモンアドベンチャー』『けいおん!』などのメジャー作品の脚本を多く手掛けてきた吉田玲子だが、近年は共通する強いテーマ性が感じられ、それが作家性として確立されてきたように感じされる。

それは、残された者の「悲しみ」と「再生」そして「希望」を描くことである。

今作の主人公・夏凪日羽の姉は、東日本大震災で亡くなったという設定ではあるが、どういう経緯で亡くなったのかは、直接的には描かれない。 

バックボーンの描き方としては、素っ気なく感じるかもしれないが、これは過去に囚われて悲しみの中で生きることよりも、残された者が希望に向かって生きていくことこそが、亡くなっていった者たちの願いであると提示したいからだ。

今までも吉田玲子が手掛けてきた『きみと、波にのれたら』『若おかみは小学生!』などでも大切な人を失った者のその後が物語の軸となっている。

世界的に話題になった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』もまさにそういったテーマが大きかったように感じられる。

 だからこそ、同じく脚本を手掛けた『岬のマヨイガ』を含め、「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」には、なくてはならない存在であり、吉田玲子の脚本力によって支えられていると言っても過言ではない。 

■ガールズムービー、お仕事ムービーとしても楽しめる構造

 今作は復興や被災者のデリケートな部分を描いている一方で、全体的に明るい雰囲気に包まれた作品でもある。

 それぞれのキャラクターに個性があり、複雑な事情を抱えている者もいるが、仲間との交流の中で成長していく若者たちの姿を描いた王道的プロット。趣味ではなく、仕事としてダンスをすることへの覚悟や責任といった社会人としてどう復興に関わっていくべきなのかということも、自然と感じさせるリアルな描写が多く取り入られている。

 これは実際に地元出身のフラダンサーやフラダンス甲子園の優勝者など、日常生活や人生の中でフラダンスというものが大きな割合を占めている者たちの、フラダンスをはじめるきっかになった動機やモチベーションを、それぞれのキャラクターに反映させているからなのだ。

 『アイカツ!』のスタッフが多く関わっていることから、フラダンスのシーンは『アイカツ!』のような演出がされている。そこに違和感を感じる人もいるかもしれないが、逆に『アイカツ!』っぽさを利用した斬新なクライマックスのフラダンスは、固定概念をくつがえすものであって、未来への希望そのものであるといえるだろう。

■福原遥や美山加恋、山田祐貴などの豪華声優陣にも注目!!

 深いテーマに具体性をもたせているのは、それぞれのキャラクターの人間性あるが、そこに命を吹き込んでいる豪華な声優陣にも注目してもらいたい。

 『ゆるキャン△』『羊とオオカミの恋と殺人』といったドラマや映画でも活躍し、『キラキラ☆プリキュアアラモード』の有栖川ひまり/キュアカスタード役としても知られる福原遥

 同じく『キラキラ☆プリキュアアラモード』の宇佐美いちか / キュアホイップ役であり『僕と彼女と彼女の生きる道』で子役して注目を集め、昼ドラ『新・牡丹と薔薇』では体当たり演技を見せ、実際にフラダンスの経験者である美山加恋

 『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビュー後、近年では『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』などの話題作に出演する一方で『100日間生きたワニ』では作品の鍵となるカエルを演じるなど声優としての才能も発揮する山田祐貴

 実写とアニメの両方で活躍できるほどの演技力をもった声優陣が多く、アニメとしても申し分なく、そのまま実写にしても成り立つようなクオリティである。

■クレジット

声優:福原 遥 美山加恋 富田望生 前田佳織里 陶山恵実里

早見沙織 相沢梨紗 上坂すみれ 東山奈央

三木眞一郎 中村繪里子 奥野香耶 本泉莉奈 木村 昴

山田裕貴 / ディーン・フジオカ

総監督:水島精二 監督:綿田慎也 脚本:吉田玲子

キャラクターデザイン:やぐちひろこ 音楽:大島ミチル 制作:BN Pictures

主題歌:「サンフラワー」フィロソフィーのダンス(ソニー・ミュージックレ

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