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THE映画紹介『30年後の同窓会』リチャード・リンクレイターの「時間」の描き方

THE映画紹介『30年後の同窓会』リチャード・リンクレイターの「時間」の描き方

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『30年後の同窓会』

作品情報

『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督が、『さらば冬のかもめ』でも知られるダリル・ポニクサンの小説を原作に、30年ぶりに再会した男たちの再生の旅路を描いたロードムービー。男ひとりで酒浸りになりながらバーを営むサルと、過去を捨てて牧師となったミューラーのもとに、ある日、30年にわたって音信不通だった旧友のドクが突然現れる。ドクは1年前に妻に先立たれ、2日前に遠い地で息子が戦死したことを2人に打ち明け、死んだ息子を故郷に連れ帰る旅に同行してほしいと依頼する。30年前のある事件で大きく人生が変わってしまっていた3人は、ともに旅をし、語り合うことで、人生に再び輝きを取り戻していく。主人公の3人を『40歳の童貞男』『バイス』のスティーブ・カレル、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』『ウェディング・バトル アウトな男たち』のブライアン・クランストン、『マトリックス』『ジョン・ウィック パラベラム』のローレンス・フィッシュバーンという、いずれもアカデミー主演男優賞にノミネートされた経験を持つ実力派が演じる。

『30年後の同窓会』基本情報

2017年製作/125分/G/アメリカ
原題:Last Flag Flying

監督: リチャード・リンクレイター

出演 : スティーヴ・カレル、ローレンス・フィッシュバーン、ブライアン・クランストンほか

短評

『俺たちニュースキャスター』でバカな役を演じていた頃が嘘のように、すっかり名俳優となったスティーヴ・カレルが主演の人間ドラマ。

まずこの映画を観る上で、原作はジャック・ニコルソン主演映画『さらば冬のかもめ』として映画化された『The Last Detail』の続編にあたる作品であることを知っておいてもらいたい。しかし、今作はキャラクター名が一新されているため、直接的な続編ではなくなってしまっているが、スティーヴ・カレル演じるラリーの過去を知る上では、観ておかなければならない作品だ。

『さらば冬のかもめ』では、募金箱に入っていた40ドルを盗もうとしたことで懲役8年の実刑とされ、ポーツマス海軍刑務所に護送するという役目を受けた海兵隊員2人との奇妙な友情が描かれている。

今作では、その後出所したラリーが妻を乳癌で亡くし、更に一人息子をイラク戦争で亡くし、その息子の遺体を引き取りに行くところで、旧友の2人を訪ねるところから始まる。

役名が変えられているため、直接的には繋がらないが、ラリーはセリフの中からも、過去に服役していたことがわかる様になっている。

青春時代を刑務所で過ごすことになってしまった、ラリーにとっての唯一の友と呼べるべき存在は、海兵時代に少しの時間だけでも一緒に友達のように過ごした2人だけであったということから、ラリーは孤独な人生を過ごしてきたことを連想させる。その中で妻に先立たれ、息子も失ってしまったという状況には、心が重たくなる。

ここで注目すべき点は、この3人は決して親友ではないのだ。限定された時間の中で一緒に過ごしたというだけ。この特殊な関係性は正に『さらば冬のかもめ』のシチュエーションを連想させる。電車のシーンも印象的だ。

役名は違うが、サルの人情味あふれる、おせっかいな部分が顔を出したり、サルとミューラーがことあるごとく喧嘩するという点でも共通する部分は多い。

所々に散りばめられたコミカルなセリフやコメディシーンは、場を和ましてはくれるが、背景にあるアメリカにおける戦争の意味や時間の流れというものの重さや残酷さが重圧なロードムービーを作り上げている。

リチャード・リンクレイターの作品としては、久しぶりに重い内容の作品ではあったが、一貫してリンクレーターが描いているものは、「時間」である。

代表的なところでは、イーサン・ホークとジュリー・デルピー主演による「ビフォア」シリーズである。「ビフォア」シリーズでは、たまたま出会った男と女の物語を何年後かの節目、節目で見せることで多くを語らずとも「時間」の流れや残酷さを表現しているのだ。それを突き詰めた、反則的とも言える映画は『6才のボクが、大人になるまで。』だろう。

原作のダリル・ポニクサンの作品には、『さらば冬のかもめ』『シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛』『タップス』などアメリカの軍隊関連作品が多いことには理由があって、実はダリル・ポニクサンは1962年から1965年まで米海軍にいた経験があるのだ。経験者であるからこその、疑問点や矛盾点、軍隊関係者から見た戦争の意味などを反映させ方が絶妙にリアルなのだ

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