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THE映画紹介『クローンズ』2号の心境を考えたら悲しすぎる…

THE映画紹介『クローンズ』2号の心境を考えたら悲しすぎる…

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『クローンズ』

作品情報

仕事で多忙な男が自分のクローン人間を作ることで時間のゆとりを生み、家庭生活を円満にしようとして、逆に混乱を招いてしまうドタバタぶりを描いたコメディ。監督は『恋はデジャ・ヴ』のハロルド・ライミス。撮影は『ゴースト・バスターズ』のラズロ・コヴァックス。SFXは「スター・ウォーズ」三部作や『エイリアン3』を手がけたリチャード・エドランドが担当し、同一人物が一つの画面に登場し、互いに飲み物を注いだり殴りあったりするという画期的な映像を実現。音楽は『大地と自由』のジョージ・フェントン。主演は『ザ・ペーパー』『バットマン』のマイケル・キートン。共演は 『ショート・カッツ』のアンディ・マクドウェルほか。

『クローンズ』基本情報

1996年製作/117分/アメリカ
原題:Multiplicity

監督: ハロルド・ライミス

出演 : マイケル・キートン、ユージン・レヴィ、 アンディ・マクドウェル ほか

短評

働いても、働いても給料は増えないし、自分の時間もない、子どもとの時間もない…中流階級の悩みは、20年前と今も大して変わっていないようだ。

ある日、怪しげな研究をしている男に出合ったことで、時間がなければ、自分を増やしてしまえばいいと自分のクローンを作ることになるが、1人では足りず結果的に3人のクローンを作ってしまう。

自分も入れて4人のダグが1人の妻と同居することになってしまうが、その事実を妻は知らないという『恋はデジャ・ブ』『アナライズ・ミー』など変化球のコメディ映画を得意とするハロルド・ライミスが1996年に製作した作品。

古典的なドタバタコメディ感は健在といったところ。安心して観ていられる作品ではあるが、この作品よく考えると怖いのだ。

『恋はデジャ・ブ』もパッケージとしてはラブコメとされているが、実は繰り返される地獄のような日々の物語なのだ。

一見、コメディとされていて、なんとなく観ると確かにコメディとして、家族で楽しめそうなものなのだが、よくよく考えると怖いというのは、ハロルド・ライミスのテイストなのかもしれない。

何が怖いかというと、クローン達は、感情もコピーしてしまっているため、気持ちの整理が難しい。のちの誕生させる3号はちょっと小ぎれいなオネエ系、4号は子供みたいな無邪気(4号はあきらかにポンコツ)な性格とわざと違いをつけることで感情に変化をつけているのだが、2号は、ほとんどオリジナルと同じ要素でコピーしているのだ。ということは、記憶や感情がオリジナルとほとんど一緒ということになる。

オリジナルと同様に妻は愛している…子どもへの感情もある…しかし、以前と同じようにはできない。魔法で作ったわけではないため、人間として存在しているため、消えることもできず、愛する人に触れられない、愛し合っているのは自分であるが、自分ではないという地獄のような苦しみを味わうことになる。

2号目線で考えると悲しくも恐ろしい運命を抱えた男のドラマでもあるのだ。

オリジナルを殺して、自分がオリジナルになろうという展開であれば、まだ「悪」という位置づけができて、観ている側も「悪いやつだから仕方ない」と思えるのだが、自分が2号であると受け入れて、引いた状態で物事見ている様子は繊細には描かれていないが悲しさしかない。

同じクローンを扱った作品としては、ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン主演の『アイランド』みたく映画自体が2号目線で展開されて、1号は悪という考え方のほうが、府には落ちないがまとまりはある。

ハッピーエンドの様な終わり方をするが、オリジナルにとってはハッピーエンドかもしれないが、クローンにとっては決してハッピーな終わり方だとは思えないし、根本的な部分として、クローンはいつでも作れる状態という問題が残っている。ダグの物語としては、完結するかもしれないが、その後クローン人間がたくさん作られる世界になったとしたら、世界滅亡への幕開けとも言えるだろう。

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