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コラム:スーパーマンやキャプテン・アメリカがバイセクシャルに?!DCやマーベルがLGBTQを積極的に取り入れる中で、立ち塞がる海外市場の壁

コラム:スーパーマンやキャプテン・アメリカがバイセクシャルに?!DCやマーベルがLGBTQを積極的に取り入れる中で、立ち塞がる海外市場の壁

 DCコミックスが出版するスーパーマンのコミックシリーズのひとつ「Super Man:Son of Kal-El」#5にて主人公のジョン・ケイトとジェイ・ナカムラのキスシーンが描かれたことによって、スーパーマンがバイセクシャルをカミングアウトしたというような誤解を招く報道が多いが、ジョン・ケントはスーパーマンことクラーク・ケントの息子であり、スーパーマンではない。

 確かに「SuperMan:Son of Kal-El」においては、主人公的な立ち位置ではあるが、この作品自体が数ある「スーパーマン」コミックシリーズのひとつでしかなく、今後全ての作品において共通する設定とされるか、このシリーズだけの限定的な設定にされるかは、現時点では定かではない。

 DCは今年の8月にも、長年ネタにされてきたバットマンの相棒ロビンが同性愛者だという噂に対して「Batman Urban Legends」#9でカミングアウトさせたことで決着をつけたように、いずれにせよLGBTQを積極的に取り入れようとしていることは間違いない。

 以前からキャットウーマンやハーレイ・クインがバイセクシャルのように描かれるシリーズもあったり、ドラマ『バットウーマン』では、主人公がバイセクシャルの設定だったりと、積極的にLGBTQを取り入れようとしている一方で、シリーズによって、男女どちらも対象とする「バイセクシャル」という保険をかけていることや、あくまでもミニシリーズという単独設定の作品とすることで、評判が悪い場合は、そのシリーズ自体を終了させればいいと思っているからこそ、ある程度の冒険ができるのも事実。

 ライバルであるマーベルコミックスも同じくLGBTQを取り入れている。今年の3月にはミニシリーズ「The United States of Captain America」に登場するアーロン・フィッシャーがバイセクシャルであることが話題となったが、実は2010年以降から割と頻繁に取り入れられるようになっている。

 2012年、オバマが同性婚支持を公に表明したことに便乗するかのように、同年に出版された「Astonishing X-Men」#51にて、マーベル史上初の公表されたゲイのキャラクター、ノーススターが同性愛婚をする様子が描かれた。この際にもメディアがこぞって報道し、その後も同じ「X-MEN」のアイスマンがカミングアウトした。

 「X-MEN」というコミック自体がもともと人種やLGBTQ、宗教、障害へのメタファーとして誕生した作品ということもあって、その「X-MEN」からLGBTQへのメッセージを発信することには大きな意味があったのだろう。

 映画『デッドプール2』(2018)に登場するネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドや「ヤングアベンジャーズ」メンバーのウィッカンとハルクリングが同性愛者であることなども描かれてきた。

 様々な人種設定が扱われていくのに伴って、LGBTQも自然な形で導入されることが多くなっていった。

 2021年11月5日から公開される映画『エターナルズ』では、ブライアン・タイリー・ヘンリーが演じるファストスは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)としては初となるオープンなバイセクシャルとなる予定(明確な同性愛表現があるかは不明)。他にも『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)からMCUに登場しているテッサ・トンプソン演じるヴァルキリーもバイセクシャル設定になるとの噂もあるほどで映画においてもLGBTQ設定が反映される可能性が広がりつつある。

 しかしマーベルの親会社ディズニーは、少し慎重になっている。特にキッズ、ファミリー層が観る作品に対してLGBTQを扱うべきかという問題に直面しているのだ。

 10代をターゲットとしたドラマや映画の中では、逆にトレンドともなっているLGBTQも、ディズニー・チャンネルやDisney+で配信のドラマや映画においては『ハイスクール・ミュージカル・ザ・ミュージカル』のような学園ドラマでも明確な表現は避けている。

 映画『Love, サイモン 17歳の告白』(2018)のドラマシリーズ『Love, ヴィクター』も、当初はDisney+で配信される予定であったが、同性愛がメインテーマとなっているため、Huluでの配信に切り替えた(日本では2021年から開始されたDisney+内で大人向けコンテンツも視聴可能とする新サービス「STAR」で10月27日から配信開始予定)

 Disney+は、実写版『美女と野獣』(2017)のスピンオフ・ドラマも企画しており、このドラマではガストンとルフゥの物語が描かれるとされている。ルフゥというと、明確には同性愛者として描かれてはいなかったが、国によっては、同性愛を連想させるという理由から登場シーンがカットもしくは、公開自体が中止になったこともあり、どう対応するかに注目が集まっている。

 そもそもLGBTQを宗教的に受け入れていないイスラム教徒の多い国や、国自体がイスラム教徒によって成り立っているモロッコのような国での公開は非常に困難な状況である。

 特にディズニーとしては、大きなマーケットである中国市場ではLGBTQ作品は完全に検閲対象になり、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)のように、同性愛を連想するシーンは全てカット、もしくは公開自体中止の可能性が非常に高い。

 ディズニーとしても近年では、ディズニー・プリンセスが独立した女性として描かれることが多くなっており、いわゆる「王子様」が登場しない『モアナと伝説の海』(2016)『ラーヤと龍の王国』(2021)といった作品も多く制作され、様々な人種の主人公が登場する中で、『アナと雪の女王』(2013)のエルサの歌う「Let It Go」がカミングアウトの曲として捉えられ、レズビアンだという噂が広がった。

 SNSを通じて拡散された「エルサにガールフレンドを(Give Elsa a girl friend)」というワードがLGBTQ運動のスローガンにまでなったが、続編となる『アナと雪の女王2』(2019)では、そういった表現はなかった。

 ディズニーが長年かけて作り出してしまった、「王子様」と出会い、結婚することこそが、女性にとって最高の幸せという概念を自ら崩そうという動きが各作品に目立つようになってきている中でLGBTQも決して無視することができないものである。

 子供も観る作品にLGBTQ要素を盛り込むかどうかという問題と並行して、海外市場を視野に入れると、入れたくても入れられない事情があるのも事実だ。

 そういった事情も考慮しつつ、両親にゲイであることを打ち明けられない青年の姿を描いた、ピクサーの短編映画『殻を破る』(2020)をDisney+が配信したこともあって、扱い方を模索している様子も常に感じられる。

 DCやマーベルもコミック自体は限られた国と市場で流通していることもあって、それほど内容について海外市場を考える必要はないが、映像作品となると別問題。世界市場と多様性、そしてブランドイメージを常に天秤にかけていかなければならないディズニーが慎重になるのも当然なことではあり、これはDCの親会社でもあるワーナー・メディアも同じで、企業側に立って考えると、非常に胃の痛くなる様な状況である

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