ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

THE映画紹介『アニマル・キングダム』異質な環境に迷い込んだ青年、ちょとした選択が善にも悪にも染まってしまう……。

THE映画紹介『アニマル・キングダム』異質な環境に迷い込んだ青年、ちょとした選択が善にも悪にも染まってしまう……。

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『アニマル・キングダム』

作品情報

実在の犯罪一家をモデルに1人の少年の葛藤と成長を描いたクライムドラマ。オーストラリア、メルボルンに暮らす17歳の少年ジョシュアは、母の死により祖母ジャニーンの家に引き取られるが、その家に住む親族は強盗や麻薬売人などの犯罪者ばかり。真面目だったジョシュアも徐々に犯罪の世界へ引きずり込まれていく。一家を束ねる祖母ジャニーン役を演じたジャッキー・ウィーバーが、2010年・第83回アカデミー助演女優賞にノミネートされた。監督はナタリー・ポートマン製作・主演の「メタルヘッド」で脚本を手がけ、本作が初メガホンの デヴィッド・ミショッド

『アニマル・キングダム』基本情報

2010年製作/113分/PG12/オーストラリア
原題:Animal Kingdom

監督: デヴィッド・ミショッド

出演: ジャッキー・ウィーバー、ガイ・ピアーズ、ジョエル・エドガートン、ルーク・フォードほか

『アニマル・キングダム 』短評

2017年のブラッド・ピット主演映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』や2019年のティモシー・シャラメ主演映画『キング』といったNetflix配給作品を近年は手掛けているデヴィッド・ミショッドが1988年にメルボルンで起きた警察2名を射殺し無罪判決を受けたトレヴァー・ペティンギルとその家族をモデルにしており、実話から着想を得て、脚本も手掛けた長編映画デビュー作品である。

母が麻薬の過剰摂取で死亡したことで、祖母のジャニーンに引き取られることになったジョシュア。母の死や疎遠になっていた祖母の元で暮らすというティーンエイジャーにとっては大事件が連続してしまい、気持ちの行き場がないのにも関わらず、ジョシュアは祖母の家族は犯罪によって生計を立てている犯罪家族でジャニーンも黙認しているという悪夢のような状態に更に苦しむことになるが、その中でも常識はわきまえている者や歳の近い友達のような者もいる。この何気ない日常はジョシュアの感覚を麻痺させていく。

やっていることは犯罪なのにも関わらず、家族としてのあるべき風景を垣間見えることができるのだ。つまり、日常に犯罪が定着としているが人間関係は良好ということだ。黒人街を扱った作品でもこの手の問題は扱われることが多い、自分の意思とは反して、環境によって人格が形成されてしまう。環境が作る悪だ

その中に入ることでしか生きられなくなったジョシュアが、自分の意思とは反して次第に犯罪に加担する様になってしまうという過程をティーンならではの感情も入交り、ジョシュア目線で追体験させるという恐ろしく巧妙な映画である。

そんな環境の変化に目をつけたのが、ガイ・ピアーズが演じる刑事巡査部長のネイサン。ネイサンがジョシュアに接触するようになってからは、刑事と家族との板挟み状態になってしまうジョシュア。その中で裏切っているのではないかと疑う者も出てきたりと、ドロドロな関係性へと物語は進んで行ってしまう。

実は常識人であるはずの祖母が行動を操っていて、またジャッキー・ウィーバーが笑顔の中にも時々みせる狂気性が恐ろしい。この演技によって、第83回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたのは納得だ。

そんな祖母から逃げたはずのジュシュアの母はどうなったのか…薬物中毒で死んでしまった。そう考えると犯罪まみれの理不尽な状況でも、次第に得られた安心感はジョシュアを留まらせた、留まることしかできなかった原因ではあるが、ガールフレンドにあることが起きてからは、事態は一変してより複雑でスリリングな泥沼へ向かっていくという終始緊張感が絶えない作品であった。

THE映画紹介カテゴリの最新記事