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この映画語らせて!ズバッと評論!!『最後の決闘裁判』3つの異なる視点から描かれる1つの出来事…4つ目の視点は映画の観客だ!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『最後の決闘裁判』3つの異なる視点から描かれる1つの出来事…4つ目の視点は映画の観客だ!!

作品情報

歴史的なスキャンダルを映画化!衝撃の実話ミステリー。 リドリー・スコット監督がジョディ・カマー、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックという豪華キャストを迎え、実話を元に、歴史を変えた世紀のスキャンダル​を描くエピック・ミステリー。​ 《STORY》 中世フランス──騎士の妻マルグリットが、夫の旧友に乱暴されたと訴えるが、彼は無実を主張し、目撃者もいない。​ 真実の行方は、夫と被告による生死を賭けた“決闘裁判”に委ねられる。それは、神による絶対的な裁き── 勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者はたとえ決闘で命拾いしても罪人として死罪になる。そして、もしも夫が負ければ、マルグリットまでもが偽証の罪で火あぶりの刑を受けるのだ。 果たして、裁かれるべきは誰なのか?あなたが、 この裁判の証人となる。

『最後の決闘裁判』レビュー

ウォルト・ディズニー・ジャパンの招待試写にて鑑賞。ただでさえ10月15日公開映画が多い中で、直前すぎて紹介するペースが追い付かない……

リドリー・スコットの中世ものというと『グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』『ロビン・フッド』など、好き嫌いが別れる作品であり、個人的にもちょっと苦手だったりするが、そうも言っていられいので観てはいるものの、『キングダム・オブ・ヘブン』は公開年にジャパン・プレミアで観たにも関わらず寝てしまった記憶がある。

また古くて、男臭いステレオタイプな中世活劇をみせられるのかと思いきや、今回は舞台は中世であるものの、かなり現代的なテーマを扱っている。

1つの出来事を複数の視点から描く作品は数多く存在するが、今作が特徴的なのは、その視点というのも、それぞれの立場や言葉から受け取った印象、解釈、記憶の欠落点などが巧妙に絡み合うことで、スクリーンに映っているもの自体も信用できなくなってくる点だ。

女性は男性につくすのがあたり前で、人間ではなく、物のように扱われる。しかし、それが必ずしも差別意識からくるものではなく、当時の概念としては、それしか用意されていなかった、選択肢自体がほとんどなかったのだ。

ジャンとジャックは、考え方は全く違うが人間のベースが、ステレオタイプそのものである。そこに女性であるマルグリットの視点を入れることによって、当時の女性の苦悩そのものを表現することに成功している。

今でこそ国や宗教にもよるが、女性も自己主張ができる時代になった。当時は女性自身が男の所有物であるべきだという意識の強い女性も多かっただけに、自己主張の敵は男性だけに限らず、女性そのものも立ちふさがるという状況で、それでも主張し戦い続ける意味があるのか……ということを追求していく。

黒澤明の作品としても有名であり、HBO Maxでドラマ化が決定している『羅生門』の要素を脚本に取り入れ、『ある女流作家の罪と罰』のニコール・ホロフセナーが脚本に参加していることによって、女性からの視点を色濃く反映させている。当初はマット・デイモンとベン・アフレックだけで脚本を制作する予定だっただけに、この選択は作品の質を大きく変えたと言っても過言ではない。

しかし、ここで極端なことを言うと、スクリーンを通して観ている視点そのものが事実とは異なっているかもしれない。つまりそれを見定める第4の視点は映画を観ている私たちということに気づいて欲しい。

今までステレオタイプで男臭い映画を多く手掛けてきたリドリー・スコット。しかもデビュー作は『デュエリスト/決闘者』に対して、今作の原題が「ザ・ラスト・デュエル」というのは、自己否定にも捉えることができるのもおもしろい。

これからの時代、偏りのある作品は作れないし、作らない。つまりステレオタイプな男性優位主義的思想の強い作品が一般的だった時代は終わったということをメタ的にも取り入れているのだ。

一方で決闘のシーンの緊張感は、正にリドリー・スコットの得意とするものだと実感するだけに、エンターテイメント性も決して忘れてはおらず、ドラマとアクションの割合が絶妙なバランスで構成されているだけに、今まで中世ものが苦手だったという人にこそ観てほしい作品でもある。

点数 80

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