作品情報
ボンドは現役を退きジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。しかし、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。誘拐された科学者を救出するという任務は、想像を遥かに超えた危険なものとなり、やがて、凶悪な最新技術を備えた謎の黒幕を追うことになる。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』レビュー
「007」は「次が最後」詐欺を繰り返しながら作り続けるシリーズではあるが、ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドは、本当に今回が最後……。
『カジノロワイアル』から続く、シリーズ自体が最後ということもあって、結構自由度も高く、独自の展開もやりやすかったとのだろう。
ネタバレになってしまうから、あまり言えないが、賛否両論のある設定が盛り込まれている。今回は全体を通しても、今までシリーズを作ってきた製作チームとしてのメタ的視点からも「家族」がひとつのテーマとなっていることもあるだけに、そう考えると納得できる。
設定を含め今までのシリーズが続くことへの手探り感がなくなっていて、やりたいことができている感じはしたのだが、女性版「007」やCIAエージェント・パロマといった魅力的な新キャラクターが今回だけというのは勿体ない。
「007」シリーズ自体は俳優を新しくして続くとしても、世界観も一緒にリセットされるだけに、今回のシリーズに登場するキャラクターも当然ながら最後。しかもスピンオフなどを作ってしまうと、世界観を拡張してしまい、マルチバース展開になってしまうだけに、それもできない。やはり今回が最初で最後なのだ。
そしてジェフリー・ライト演じるフェリックス・ライターが久しぶりに登場する。フェリックスは過去のシリーズや小説にも、たびたび登場するキャラクターであり、ボンドの唯一の親友といったところ。最後ということで、引っ張り出されてきた、言ってみれば「おいしい素材」
テーマの「家族」もシンプルな意味としてでもあれば、様々な意味での「家族」がキーワードとなっていて、フェリックスもボンドにとっては家族のひとりのようなもの。もちろんMI6の仲間たちのチームワークも息が合ってて、なんだかんだで仲の良さがにじみ出ているのも、今シリーズの特徴的な部分である。
前作でシリーズを通してのボスが登場してしまったため、それを考えるとラミ・マレックが演じるサフィンが最後の相手としては、物足りない感じもする。ところがそのすかされた感自体が狙いであって、劇中のセリフにあるように、「今の時代は善悪の区別が簡単につかない相手」であり、これも直接的ではなくても、感覚的にスペクターによって作られた存在ということ。
その脅威から派生した負のサイクルの象徴と戦うことになる。この代表格を断ち切ることで、これもまたシリーズの終わりということだ
サフィンの能面もそうだが、所々に日本テイストなのもキャリー・ジョージ・フクナガ の独自のセンスによるものだろうが、畳の上でボンドが土下座をするシーンが観られるとは思っていなかった。本来では2020年に公開される予定だっただけに『半沢直樹』を意識したのでは??とも思ったりして。
ボスも倒し、そこから派生した負のサイクルも断ち切り、ボンドが過去のトラウマも断ち切り…という今までの伏線をことごとく回収していく様子は、アニメの最終回のようでもある。
ピアーズ・ブロスナンからダニエル・クレイグになったときもかなり批判された。ところが今ではすっかり自然になったもので、イメージなんてそんなもの。それを良くも悪くも利用して大胆なフィナーレを飾ったのは、かなり評価できる点だ。
オープニングムービーのセンスは抜群によかっただけに、世界観関係なく引き継げるねのでもあるし、今後もイギリスの歌手を起用して映像とシンクロさせるテイストだけは維持してもらいたい。
点数 83
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