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THE映画紹介『クイズ・ショウ』名声を維持することの欲と難しさ……。

THE映画紹介『クイズ・ショウ』名声を維持することの欲と難しさ……。

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『クイズ・ショウ』

作品情報

1950年代にアメリカのテレビ界を震撼させた実話を、監督としても評価の高い名優ロバート・レッドフォードが映画化。アメリカで社会現象まで巻き起こした大人気クイズ番組“21”。チャンピオンであるハービーは、その圧倒的な知識で次々と勝ち進んでいった。しかし視聴率低下を危ぶむスポンサーが、チャンピオンをもっと見栄えの良い人物に変更するよう番組側に要求。そこでプロデューサーは、ある計画を実行するのだが……。

『クイズ・ショウ』基本情報

1994年製作/133分/アメリカ
原題:Quiz Show

監督:ロバート・レッドフォード

出演:レイフ・ファインズ、ジョン・タトゥーロ、クリストファー・マクドナルド、マーティン・スコセッシほか

『クイズ・ショウ』短評

映画『クイズ・ショウ』は第67回アカデミー賞では作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞にノミネートされた作品である。

この映画の舞台となる1950年代というのは、日本でもそうだった様にテレビというものが、まだ一般的に普及しておらず、これから普及していくであろうという年でもあったために、国民によるテレビ番組への関心というのは、今では考えられないほどであった。

中でもクイズ番組というのは、俳優やお金持ちではなく、一般人が勝ちあがることで巨額の賞金ほ手にできるという夢のような番組であり、国民の心を鷲づかみにしていたジャンルでもあった。そんなクイズ番組の黄金期真っ只中の1956年から1958年にNBCで放送されたアメリカのクイズ番組「21」がこの映画の題材となった番組だ。

「21」というクイズ番組も勝ち抜き続けることで賞金が膨らんでいくという、一家千金を狙う国民にとっては夢のような番組だったが、当時のチャンピオンであったハービー・ステンベルは、あまりスターというイメージが定着しないキャラクターだったことから、スポンサーや上層部の圧力などもかかり、降板させることになる。つまりクイズ番組自体が「やらせ」であり、それを理解したうえで出演していたステンベル自身が断ることができなかったのだ。

まだテレビというものが絶大な存在であり、すべてが本物だと信じていた国民にとっては「やらせ」なんて思いもしなかったことだったが、基本的に当時のクイズ番組はほとんどが「やらせ」であった。これは日本でも同じである。

視聴率を上げるためには、もっとスター性のある出演者をチャンピオンにしておくべきだということで、白羽の矢がたったのが、ノーベル賞受賞者を大量に出している超名門コロンビア大学の当時は教員だったチャームズ・ヴァン・ドーレンであった。今では「ハリー・ポッター」のヴォルデモートのイメージがついてしまったレイフ・ファインズがまだ30代だったため、二枚目スターになり得るという説得力は抜群なキャスティングであったと思う。

ヴァン・ドーレン自身も当初は他の国民と同じく、すべて本物の実力主義の番組だと思っていただけに、事実を知らされた後は躊躇するものの、状況に流されて、結果的に加担してしまうことになる。ヴァン・ドーレンは貧しい家庭ではなく、裕福な家庭で育ち、それなりの地位のある父親からのプレッシャーや認められたいと思う気持ちの反発でクイズ番組のチャンピオンとしてスターのように騒がれるという環境に依存してしまうのだが、事態を悪化させたのがチャンピオンの座から下ろされたステンベルの告発であった。

足を踏み入れてしまったからには、後戻りができないヴァン・ドーレンは泥沼状態になり、立法管理小委員会の捜査官であるディック・グッドウィンもヴァン・ドーレンに接触してくるようになるが、ディックとヴァン・ドーレンの間には友情関係のようなものが芽生え、真相を知っていくうちに巨悪の圧力によって、泥沼状態になってしまったヴァン・ドーレンをかばうような態度をするようになる。

上の指示だったのだから、早く言ってしまえばいいと思うかもしれないが、今であれば「どうせやらせなんでしょ」なんて思う人も多いだろうが、当時の国民にとっては「やらせ」だったなんてことは、国民の今まで信じていたものを翻してしまう大事件だったのだ。スターだと思っていた人物は偽者だったという現実を受け止めるだけの脳内処理の態勢などなかったのだ。

今もこれからも一般人がバッシングを受けることなどあってはならない。テレビ業界ま規制も厳しくなってきて、「やらせ」は黙認しても一般人を巻き込むことはしなくなった。また一般人を出演させることで暴露の危険性も高まることから考えれば、何故、最近のクイズ番組は俳優やタレントばかりかということの意味がわかってこないだろうか…

このモデルとなった出来事は、間違いなくその後のテレビ業界に大きな影響を与えた出来事なのだ

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